ライフ

山口恵以子氏、在宅医と共に自宅で看取った母の最期振り返る

自宅で母を看取った山口さん(撮影/横田紋子)

 最愛の母・絢子さんと過ごした最期の日々をあたたかな筆致で綴った『いつでも母と』(小学館刊)を上梓した作家・山口恵以子さん。絢子さんを住み慣れた自宅で看取ったのは2019年1月18日のこと、その最期の日々を在宅医として母娘に寄り添っていたのが、しろひげ在宅診療所院長の山中光茂さんだ。「先生のおかげで母は幸せな最期だった」と山口さんが思うまでの道のりは、後悔と逡巡の連続だった。山口さんと山中さんが、最期の日々を振り返る。

【プロフィール】
作家・山口恵以子さん/1958年生まれ。早稲田大学文学部卒業。丸の内新聞事業協同組合の社員食堂に勤務の傍ら小説を執筆し、2013年『月下上海』で松本清張賞を受賞。「食堂のおばちゃん」「婚活食堂」シリーズなど著書多数。

しろひげ在宅診療所院長・山中光茂さん/1976年生まれ。慶応義塾大学法学部、群馬大学医学部卒業。2009年三重県松阪市長に。2期務めた後、四日市市で在宅医療に従事。その後、東京都江戸川区で在宅医として勤務後、2018年「しろひげ在宅診療所」を開設。

〈山中さんが絢子さんを訪問診療していたのは約1年間。それ以前は定期的に大学病院に通院していた〉

山口:ああいう大きな病院では毎回、尿検査と血液検査をするんですね。予約時間より早く着いて検査を受けても、結果が出るまで先生にお目にかかれない。午後1時に病院に行っても出るのは午後5時頃。散々待たされ、私も母も疲れ果てていました。

山中:そのお気持ち、よくわかるなぁ。私も総合病院で働いていた頃は、外来で半日に50人の患者さんを診ていました。待ち時間は長いのに、診察はあっという間。患者さんを丁寧に診るのは難しいんです。

山口:先生は家にいらっしゃったとき、いつも時間をかけて丁寧に診察をしてくださいましたね。

山中:それでも充分な時間とはいえないのですが、在宅ではご家族からも普段の状況を聞くことができるので、血液検査をしなくても、ちょっと調子が悪そうだなとか、貧血気味だとか、聴診や触診、顔色でわかるものです。そのほか、私たちは横断的に診るので、薬を半分以下に減らしたり、コントロールできるメリットもあります。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・イメージ 写真はいずれも当該の店舗、販売されている味噌汁ではありません)
《「すき家」ネズミ混入味噌汁その後》「また同じようなトラブルが起きるのでは…」と現役クルーが懸念する理由 広報担当者は「売上は前年を上回る水準で推移」と回答
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン