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【著者に訊け】医師作家・知念実希人氏 『十字架のカルテ』

知念実希人氏が『十字架のカルテ』を語る

【著者に訊け】知念実希人氏/『十字架のカルテ』/小学館/1400円+税

 2018年『崩れる脳を抱きしめて』、2019年『ひとつむぎの手』、2020年『ムゲンのi』と3年連続で本屋大賞候補に。また、最近は内科医として新型肺炎対応にも追われる知念実希人氏。新作『十字架のカルテ』は、精神鑑定の第一人者で光陵医大附属雑司ヶ谷病院院長〈影山司〉をホームズ役、彼の助手にわけあって志願した医局員〈弓削凜〉をワトソン役に、いわゆる〈触法精神障害者〉の鑑定や治療実態に迫った精神医療ミステリーだ。

〈一、心神喪失者の行為は、罰しない。二、心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する〉と定めた刑法39条の下、被疑者の精神状態や犯行時の責任能力に関して診断を下すのが鑑定医の仕事。だがよほどの大事件以外は30分程度の「簡易鑑定」が主流となるなど、時間も予算も十分といえないのが実情だ。

 影山は凜にこう釘を刺す。〈精神鑑定は割に合わない仕事だ。時間や手間もかかるし、触法精神障害者との接触はこちらも精神的に消耗する〉〈それを全て理解したうえで、君は精神鑑定を学ぶ覚悟があるんだな〉と。

「その疾患を引き起こした原因が何か、心の問題は因果関係を論理で説明できないだけに、ミステリーの題材として魅力的でした。私は今まで内科や外科等、いろんな医療小説を書いてきましたが、体ではなく心を扱い、治療上のアプローチも全く違う精神科は、読者にとっても発見が多く、誤解を恐れずに言えば興味深い領域なのではないかと思えました。

 その興味深い領域を面白い小説に書きたいというのが常に私の最大の執筆動機です。何か社会に対して問題提起したいとか、そんな下心は一切ありません。時間も忘れるほど夢中になれて読み終えた後も満足感がある、それが僕の理想とする小説であり、エンタテインメントなんです」

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