ライフ

【著者に訊け】在宅医療と友人の死を描くノンフィクション

『エンド・オブ・ライフ』の著者である佐々涼子さん(撮影/政川慎治)

【著者に訊け】佐々涼子さん/『エンド・オブ・ライフ』/集英社インターナショナル/1700円

【本の内容】
 死ぬ前に家族でディズニーランドに行きたい。そんな患者の願いを全力で叶えてくれる訪問医療の診療所がある。終末期を迎えた患者、その人を支える家族、医師、看護師、ヘルパーらが何を思い、どう行動したのかをきめ細かく取材し、在宅での終末期の現実と課題を描く。一人ひとりに今後の生き方を考えさせてくれるノンフィクション。

 生と死を書いてきた佐々涼子さんが新作のテーマに選んだのは在宅での終末医療。友人で看護師の森山文則さんがすい臓がんで亡くなるまでの話を軸に、人生最後の時を自宅で過ごす人、それを支える人々の姿を描いている。

 始まりは7年前、京都で訪問医療を行う診療所を取材し、そこに勤めていた森山さんたちと患者の家々を回った。スタッフの献身的な仕事ぶりには驚かされた。「家族でどうしても潮干狩りに行きたい」という末期がんの患者とその家族の最後の希望を叶えるために車を連ねて付き添い、付近の病院を確認し、酸素ボンベを補充する。

「そうやって悔いなく生を全うできる人がいる反面、家族の負担の重さに悩む人もいました。在宅医療が希望ばかりではないことが見えてきて、どうまとめればいいか、書き進められなくなったんです」

 その後、佐々さんは自律神経の乱れで体調を崩してしまう。森山さんも相談に乗ってくれた。紆余曲折を経て元気を取り戻した2年前、森山さんにがんが見つかる。余命半年。200名もの患者を看取ってきた森山さんは、今度は自分の言葉を残してほしいと佐々さんに連絡したのだった。

「森山さんに会っていると過去に取材して亡くなった人たちのことが浮かぶんです。森山さんが彼らのことを念頭において行動しているのがよくわかる。迷い揺れながら、どう生きるのが幸せなのか、確かめている。人はこうして人生の意味を見つけていくんだなって」

関連キーワード

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン