明かりがともれば本来はこんな独特の夜の街(写真/AFLO)

 組合関係者が話す。

「文面にはきつい言葉が並んでいますが、組合としての強い意思表示の結果、そういう言葉を使いました。この通知以降、全店舗が休業に賛同してくださいました」

◆「どうぞ写真に収めてください」

 一斉の自主休業は、100年を超える飛田の歴史でこれまで2度あった。最初は昭和天皇の崩御の際で、大喪の礼の日に半日だけ営業を停止。2度目は大阪でG20(20か国・地域首脳会議)が開催された昨年6月。2日間の休業に加え、G20の開催前後の計8日間は、女性が玄関先に並ぶ顔見世を禁止し、店内の様子を隠すために暖簾をかけて営業した。

 飛田を訪れると、見慣れぬ風景をつい写真に収めたくなるものだ。しかし、各経営者や曳き子のオバちゃんは働く女性のプライバシー保護を理由に、カメラを構える観光客には厳しい態度で接してきた。だが、ロックダウン状態の今は違う。飛田会館を出ようとした時、関係者が私に告げた。

「どうぞ町並みを写真に収めて帰ってください」

 緊急事態宣言が発令された4月7日は、月が地球に接近し、いつもより輝きが増して見える「スーパームーン」の夜だった。本来であれば飛田新地が最も賑わいをみせる夜8時に再び同地を訪れると、いつもなら軒先に吊るされているはずの赤提灯も撤去されていた。

 日本最後の色街からは完全に色が失われ、漆黒の一帯をわずかな街灯と月明かりが照らしていた。

※週刊ポスト2020年4月24日号

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