2010年のM-1決勝の2人のネタが、まさにそうだった。
スリムクラブは真栄田が内間を救済し、ゆえに漫才コンビとして成立しているのだと思っていた。だが、話を聞き、何度も2人のネタを見ている内に逆ではないかと思えてきた。真栄田は内間とは違って神経が細かい。自分が発した言葉に対し、客がどう反応するかを常に観察している。だからだろう、合間合間で内間のおでこを叩く。ウケたときは照れ隠しでペシリとやり、滑ったときも照れ隠しでペシッとやる。内間がいるから、真栄田は真栄田でいられるのだ。
「ほんとにそうだと思います。彼に出会えてよかったですね。変なやつだけど、ほんとに優しい男なんですよ。内間のこと好きですから、内間とずっとしゃべってたい。いつまでも内間と漫才をしてたいですね」
2人は今でも週3回のペースで飲みに行くのだという。真栄田が嬉しそうに語る。
「最近、どうよ、みたいな感じですね。家族のこととか、子どものこととか、人生のこととか。1日ごとにだって、人間の考え方は変わりますから。飽きないですよ。おれも新たな悩みが出てきたりしたら、相談に乗ってもらったりとしてますね。内間と話すことで、なんか勇気が出てくるというか。不思議ですね」
我々がM-1の舞台でもう一度、2人に見せて欲しいのは、おそらく、そんなときの2人である。(5回連載/了)
文●中村計(なかむら・けい)/1973年千葉県生まれ。同志社大学法学部卒。著書に『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇』など。ナイツ・塙宣之の著書『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』の取材・構成を担当。近著に『金足農業、燃ゆ』。