緊急事態宣言にともない、東京都は6つの業態や施設に休業を要請した。そこには予想通りキャバレーやナイトクラブ、個室付浴場業に係る公衆浴場など、いわゆる水商売、風俗業と言われる分野の施設が含まれていた。仕事ができなくなってしまった彼ら、彼女たちにどのように安定した生活を保たせるべきか。ネットの一部で言われているように、彼らに支援は必要ないと切り離してよいものなのか。ライターの森鷹久氏が水商売に携わる人たちの実情をレポートし、支援について考えた。
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新型コロナウイルスの感染拡大で、小中高校の休校が続いている。3月の全国一斉休校が決まった直後、仕事を休職せざるを得なくなった保護者に休業補償がされることが決まった。この制度には当初、「風俗業」「接待を伴う飲食業」で働く人々は含まないとされていたが、彼らも同じように補償の対象となるよう方針が変更された。「世論から差別ではないか、などと批判が相次ぎ見直した格好」(民放政治部記者)というが、果たしてこれで本当に困っている人々に金が行き渡るのか。
非常事態宣言に伴う休業要請とは別に追加で休業を求められている、いわゆる「接待を伴う飲食店」に分類される東京都港区のクラブオーナー・Hさん(50代)は言う。
「補償の門戸を広くしてくれたことには感謝します。水商売にとっては1~2月は閑散期、3~4月の歓送迎会シーズンを楽しみに待っていたらこれでしょ。近くの店のスタッフから陽性患者が出たこともあり、うちも3月終わりから休業中。基本的には、歩合、出ただけ給与がもらえるシステムですから、その収入に準じて補償がなされるのかは不透明。そもそも、それが給付なのか補助なのか、借金なのか、よくわからないけども、それでも、制度自体はありがたい」(Hさん)
補償と一括りに行っても、子供の休校に伴う給与補償、そして休業を余儀なくされた業種従事者への雇用調整など、受け取る側の事情に応じて用意されてはいる。ただ、自分自身がどの属性なのか、正直わかっていない人も多い実情。いずれにせよ。一時的にでも、どんな形でも金を受け取れるという事実は、歓迎されている。
とはいうものの、不満もある。
「いまだに”水商売=暴力団”というイメージで、厚労省が我々を説明したことです。確かに昔は関係がありました。しかし、お上が厳しくとりしまったおかげで、私の周囲の店で、暴力団が運営している、関係しているところはほとんどない。普通の会社としてやっているんです。さらにいえば、賃金補償額が1日上限8330円。これじゃアルバイトと変わらない。バカにしている金額だし、すでに売り上げの下がっていた二月分の給与もベースに換算されると、その少ない金額の満額を手にできない可能性すらあります」(Hさん)