一方、消費者の側も休業や失職などによって収入が減った分、節約志向を強めることは確実な情勢。少ないパイを激烈に奪い合う“デスマッチ”が世界の市場で繰り広げられることになりそうだ。
「コロナ後の合戦の勝敗を分けるのはスピード。上手くやれた企業がやれなかった企業のシェアを奪うという戦いになるでしょうね。とくに大衆車クラスでは、スピードのない会社が市場から退場することになるかもしれません。ウチだってボヤボヤしていたら危ない」(別の日系メーカー関係者)
その戦いはどのような様相を呈するのであろうか。自動車業界の競争といえば、メーカー同士、国同士という印象が強い。が、今回のパンデミックからの立ち直りにおいては、そういう過去の戦い方とは違うアプローチが必要になってくる。
鍵を握るのはサプライチェーンだ。一般にもよく知られた話ではあるが、クルマは2万点ないし3万点という膨大な数の部品の集合体である。そのうち一つが欠けたり、不良があっただけでもう作れなくなるという、きわめてデリケートな商品だ。
自動車メーカーの社員に話を聞いてみると、自分たちがいかに部品メーカーのおかげで成り立っているかということをあらためて再認識させられたという声が多数聞かれた。
「クルマ部品は今や多国籍。たとえば衝突防止システム。国内部品メーカーからユニットを購入していても、そのユニットを作るための部品は海外で作られていたりします。電子回路のコンデンサが足りなくなるだけで供給が止まるのです。
われわれに限らず自動車メーカーは、メガサプライヤー(巨大部品メーカー)との付き合いが増えた今日でも、どうしても部品メーカーや技術を囲い込みたくなる本能を持っています。しかし、パンデミックで寸断されたサプライチェーンを修復するという観点では、自分たちだけに有利なようにという姿勢はむしろ仇になる。
場合によってはライバルに塩を送るような策であっても、復興の素早さで機先を制することができるのであれば思い切ってやるべき。そんな議論を社内チームでしています」(前出の日系メーカー関係者)