「新型コロナウイルス感染症に関しては、わかっていないことが多く、抗体の意義もまだはっきりしていません。抗体検査の意味というのは病気によって違い、風疹や麻疹ならば、抗体があるのは免疫を獲得していて感染症から守られていることを意味します。つまり“抗体があれば生涯安心”ということです。一方、HIV感染症や慢性C型肝炎のように、抗体があるかどうかを調べることで、罹患しているかどうかのスクリーニング検査になるケースもある。
コロナなどの抗体の場合、免疫の“記憶”が残っている間は、同じウイルスに感染しても症状が出なかったり、軽くなったりすると考えられています。ただ、新型コロナの場合、その記憶がどれだけ長くもつかがまだわかっていません。それゆえ“抗体があったからもう心配ない”とは喜べないところではあります」
では、抗体検査を受ける意味はどこにあり、受けた人たちは、その結果をどう受け止めればいいのか。上医師は「個人個人が自身の行動を考え直す機会とするのがいい」と言う。
「抗体があるうちは、2回目に罹った際に重症化する可能性は低くなると考えられます。医療関係者をはじめ、自身の仕事に取り組むうえで、抗体の有無という参考情報があることの意味は大きいのではないか。ただし、重症化率がどのくらい低下するかは判明していないので、陽性で抗体があったからといって、“自分はもう大丈夫”と過信するのはよくない。また、2回目以降の感染で、自分には症状がないまま他の人にうつしてしまう可能性は残っていることにも注意が必要です」(上医師)
現状の検査キットの精度の問題もある。すでに体内に抗体ができているにもかかわらず「陰性」と出てしまう「偽陰性」の可能性があることに加え、構造がよく似た他のウイルスに対する抗体を検出する可能性も否定できないという。日本赤十字社も、献血血液で新型コロナウイルスに対する抗体検査に使用する測定キットの信頼性を評価する研究を実施すると発表した。5月1日にも、最初の調査結果が公表される予定だ。
そうした検証を受け、検査キットもこれから改良が重ねられ、より感度の高いものが出てくるだろうと前出の上医師は言う。