国内

9月入学論が浮上、なぜ日本は「4月新年度」が続いてきたか

入学式といえば桜のイメージだが…

 全国を対象にした新型コロナ「緊急事態宣言」の延長により、一部では各自治体が実施する小中高の休校が続いている。登校はおろか、入学式すらできなかった新入生もいるなか、「9月入学」「9月新学期」への制度変更をめぐる議論がにわかに活発化した。「9月新学期がグローバルスタンダード」などと言われるが、そもそもなぜ、日本の学校は4月始まりなのか。歴史作家の島崎晋氏が紐解く。

 * * *
 細かく見ていけば、年度の種類は米穀年度、酒造年度、事業年度など日本だけでも数十に及ぶ(*注)が、国民全体に関係するのは国や自治体の「会計年度」と児童・生徒らの学年を分ける「学校年度」の2つである。世界全体を見渡せば、この2つが一致しないところのほうが多いが、日本では最初に法制化された際、学校がすべて国公立であった関係上、学校年度が会計年度に付随するかたちが現在も継承されている。

【*注:米穀年度/米穀の取引に関わる年度。前年11月1日〜当年10月31日。:酒造年度/酒造・醸造業界における年度。当年7月1日〜翌年6月30日。:事業年度/法人の支出や収入を整理分類する区切りとしての1年。法人ごとに異なる】

 4月を新年度の始まりとする制度は、学校令(勅令)が公布された明治19年(1886年)に始まる。それまで明治政府の会計年度は「1〜12月」、「7月〜翌年6月」など短い間に変遷を重ねていた。試行錯誤の末、明治19年に「4月新年度」が定められた理由としては、主に3つの説が唱えられている。

 まず1つ目は稲作との関わりである。農家は収穫した米を現金化したうえで納税するよう定められていたが、政府が収支を把握し、予算編成を行なうためには1月では早すぎ、4月くらいがちょうどよかったという説である。

 2つ目は、当時の覇権国家イギリスの会計年度に合わせたというもの。当時のイギリスは欧米諸国のなかでも頭一つ抜きん出た存在で、日本政府は島国と君主制という2つの共通項から親近感を抱いたことも合わさり、イギリスに倣ったとする説である。

 3つ目は、当時の大蔵卿(財務相)・松方正義が任期中の赤字計上を嫌ったから、という説。当時は7月から翌年6月末を会計年度としていたが、赤字が見込まれた明治18年度を3月末までの9か月と短くすることで、松方蔵相としては財政赤字を免れることができた。それが明治19年から4月新年度が採用された理由だというのである。

 この説はNHK総合テレビの人気番組『チコちゃんに叱られる!』でも「大蔵省のトップがインチキしたから」として紹介された。当時の「公文類聚(こうぶんるいしゅう)」というれっきとした公文書(法律及び規則の原議書などを収録した編集物)の中に、詳細が記録されている。

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン