本書は後半部で、『國體の本義』の「天皇大権」が占領下に「アメリカ大権」に丸々すり替わったことを強調する。本書の読みどころだ。護憲派も改憲派もその観点から同時に厳しく批判される。
「日本が天皇大権の国であり、天皇親政になじんでいたから」、占領は成功した。アメリカの占領は「明治以来の国体の枠のなかで、行われた」。その「アメリカ大権」はサンフランシスコ講和条約と日米安保条約にかたちを変え、今も現に日本を縛っている。『國體の本義』に戦後、正面から立ち向かった思想家がいた。三島由紀夫と吉本隆明である。二人は『國體の本義』が出た年にまさに中等教育を受ける世代なのだ。
※週刊ポスト2020年5月22・29日号