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ヤクザの「当番レシピ」に学ぶ絶品チャーハン

「作る量は多め。いつ誰が来て食べてもいいように、でかいズンドウの鍋で作る。市販のカレールーなら最低4箱は使ったね。ご飯は少なくとも、一度に5合は炊いた」

「朝食は必ずご飯。それに味噌汁、卵焼きにウインナーと簡単なものさ。あとは昨夜の残り物。温泉宿みたいな朝食ではない。夜も、カレーなら、それにジャガイモやタマネギの味噌汁、漬物ぐらいさ。おかずは何品も作らないね」

 当番が作るのが朝食と夕食のみなのは、堅気が1日3食なら稼業の者は1日2食でいいという某有名組織の教えからきているという。そのため、事務所にはいついかなる時でもご飯と味噌汁、漬物だけは置いてあった。金がなくても、事務所に行けば腹一杯飯が食えたという。

 それが今や、特定抗争指定暴力団に指定された組では、事務所の使用は禁止で当番は不要。タダで食える場所がなくなった。おまけにコロナで、組長や幹部たちも自粛。外出しなくなれば運転手も必要ない。自分では稼ぐ充てがなく、当番の飯や運転手としての小遣いで生きていた下っ端たちは、本当に食えなくなってきた。

「飛ぶやつが増えてきた」

“飛ぶ”とは、勝手に組を抜けて逃げてしまうことだ。

「飛んだと聞いていた、いい歳をした他の組のやつが、地方の盛り場で仕事を探しているのをうちの若いのが見つけて『捕まえときましょうか?』と連絡してきたけれど、放っておけと言っておいた。今頃、どこかで住み込みの仕事でも見つけて転がり込んでるだろう」

 シノギが減っている現状では、自分の食いぶちすら稼げないやつに用はないらしい。ヤクザの世界も生き残るには頭数より能力の時代に変わりつつある。

 さて、本日の当番レシピ、チャーハンのこだわりポイントを聞いた。

「中華は火加減。IHだとチャーハンにいい火加減にならないし、ガスコンロでも強火にしておくと自動で火加減を弱めてしまうものがある。そこで俺が使うのはボンベ式のカセットコンロだ。あれなら火力が強くできるから、チャーハン作りには最適なんだ」

 食卓で鍋を囲む時やアウトドアで料理をする時などに使う、あのカセットコンロがいいらしい。

「まず少し冷めたご飯をボウルに用意し、そこにサラダ油を回しかけて、ざっくりと混ぜ合わせる。これがパラパラチャーハンのコツさ」

「油が満遍なく米に混ざったら、そこに卵を溶いて絡めておく。フライパンに油を入れて火にかける。カセットコンロの火は強火だ。そこに卵を絡めたご飯を投入。手早くざっくり混ぜていく。当番の時は量がハンパないから、鍋を振るにも重くてね。具はネギと、ハムかチャーシュー。忘れちゃならないのはナルト」

 街中華のごとく昔風の味わいを出すには、白とピンクの色合いが絶妙なナルトが欠かせないらしい。ナルト入りチャーハンの評判は上々で、当番レシピに加えられた。

「細切りにしたナルトを入れ、手早く炒める。香ばしい匂いがしてきたら、塩コショウと創味シャンタンで味付け。これがいい味を出してね。しっかりした味付けを好むやつが多かったしな」

 この日はナスとミョウガをさっと塩もみし、めんつゆで味付けした即席漬物を添えたという。

「料理を作っていると、あいつの飯は柔らかすぎたとか、水っぽかったとか、いろいろ思い出して懐かしくなるよ」

 ヤクザの日常が垣間見えてくる当番レシピ。そのレパートリーはまだまだ豊富にあるという。

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