しかし、そこに「真実性の錯覚」はないのだろうか。ふとそんな疑問を感じた。真実性の錯覚とは、同じような情報を繰り返し聞くことによって、それが間違っていようとも正しいと思い込むことを指す。こちらも、「公表される感染者数は本当に信用できるのか」と頭のどこかで思いながらも、発表される低い数値を毎日見ていると、いつの間にか正しい数値のような錯覚に陥り、コロナが本当に収束向かっているような気さえしてくるから不思議だ。1日も早く、日常を、経済活動を取り戻したいという願望もこの思い込みを後押しする。
真実性の錯覚を裏打ちするような情報も出た。ソフトバンクグループが10日、グループの社員や医療従事者ら4万4066人を対象に行った新型コロナウイスルの抗体検査の結果を公表したのだ。陽性と出たのは191人、陽性率は0.43%。某新聞によると、これは東京都などで実施された検査結果と同じレベルで、国内における感染者の割合は低いことが示されたという。
ところがだ。陽性者191人中PCR検査を受けていたのは42人いたが、そのうちの29人は陰性。抗体検査で陽性だったということは、既にコロナに感染していたことをほぼ意味する。191人もの人が無症状で感染していたことだけでも驚きなのに、PCR検査を受けていなかった人が149人もいたのだ。
だが、これについて詳しく報じているメディアはほとんどない。東京都が公表している感染者数も、あくまでPCR検査で陽性と判定された人の数でしかないことを考えると、数字が示す信憑性は乏しい。
コロナ「第2波」への警戒が叫ばれる中、東京アラートは解除され、それに伴い休業要請などの緩和も「ステップ2」から「ステップ3」へと進めるという。だが、世界中が「コロナ・ストレス」下にある今、楽観的な判断が人々の「錯覚」を助長しかねないことを、小池都知事は今一度自問するべきだろう。