法整備とともに公共施設では多目的トイレの設置がすすんだ。多言語対応もしている羽田空港の案内標識(時事通信フォト)

法整備とともに公共施設では多目的トイレの設置がすすんだ。多言語対応もしている羽田空港の案内標識(時事通信フォト)

 行為に及んだかどうかはわからないが、まあ普通に考えれば多目的トイレに健常者がペアで入ることはないだろう。片方の具合が悪く吐きそう、とかはあるかもしれない。

「いやいや、そんなのはすぐわかりますよ。具合が悪いとか、障害者の付き添いとかじゃないってね」

 原西さんが現認することもあるが、だいたいは施設警備からの報告だという。

「多目的トイレの入り口にはカメラがついてますから。誰が入ったか出たかはモニターで施設の人が監視してます。悪い人を捕まえるとかじゃなくて、ずっと使用中だと苦情が来るんです」

 それはそうだろう。多目的トイレは障害者、高齢者や乳幼児を持つ親、人工肛門利用者(オストメイト)のためにある。1994年のハートビル法、2000年の交通バリアフリー法(東京都の条例では「福祉のまちづくり条例」)を経て、現在のバリアフリー設計の多目的トイレ(東京都では「だれでもトイレ」とも)が整備された。使う人の大半はやむにやまれぬ人々だ。健常者が使うのは構わないが、目的外利用は言語道断だろう。

「でもちょっとの隙に二人で入られたり、見かけで判断するわけにもいかない。さっき話しましたけど男女だけじゃなくて男同士もいるし、一人でやってるのもいるわけで。場所柄そういうのが多いってのもありますけど、本当に困ります」

 警備員も清掃員も声掛けはするそうだが、たしかに見かけだけで判断するわけにもいかないし、年齢で判断というわけにもいかない。

「子どもの場合は事件になっちゃうかもしれないじゃないですか。親子連れだと思ったらとんでもないことになってたこともあります」

 まさしく事案というやつだろう。多目的トイレは迷惑なだけでなく犯罪に絡むことも多い。今年の3月には幼い姉妹を多目的トイレに連れ込んで破廉恥な行為に及んだ86歳の男が逮捕されているし、つい先日(6月14日)にもマンションや多目的トイレで5歳の女の子にわいせつな行為をしたとしてベビーシッターの男が逮捕された。

「でも見かけじゃわかりませんし、出入りはカメラで監視できてもトイレの中にカメラはありません。こっちが盗撮になっちゃいますから」

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