スポーツ

高3でレギュラーを掴んだ球児の父が語る「夏の代替試合」

阪神甲子園球場では8月に選抜高校野球大会出場予定校を招待して交流試合が行われる(時事通信フォト)

阪神甲子園球場では8月に選抜高校野球大会出場予定校を招待して交流試合が行われる(時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの流行をうけ夏の甲子園大会が予選も含めて中止になったとき、涙する高校球児の姿がいっせいにニュースで流れ、何らかの救済をという声が強まった。その声に後押しされてか、全国の都道府県で代替大会の開催が次々と決まっていった。仕事や人生がいまひとつうまくいかないと鬱屈する団塊ジュニアやポスト団塊ジュニアを「しくじり世代」と名付けた俳人で著作家の日野百草氏が、今回は、高3でレギュラーをつかんだ高校球児を子に持つ40代の父親が胸のうちに抱える、夏の甲子園大会中止への本音についてレポートする。

 * * *
「誰もコロナなんか気にしてない。中止にする必要、あったんですかね」

 千葉県柏市、柏駅のすっかり元通りになった日曜の混雑と嬌声の中、山倉哲さん(40代・仮名)はつぶやいた。改札で待ち合わせてステーションモール5階の喫茶店へ。同じ高校だったというが、私は山倉さんを知らない。学年も違うしマンモス校なので当然だが、どうしても言いたいことがあるとメールをくれた。最近は私のもとに告発や自身の告白などのメールがよく来るようになった。大方は真偽を含め対応の難しいものばかりだが、山倉さんは地元で同じ高校だというので会ってみた。それに柏は大好きだ。

「春どころか夏の高校野球も中止です。はっきり言います。私は父親として納得できません」

 山倉さんは坊主頭で長身、なかなか威圧感がある。建設関係で仕事そのものはコロナの影響をほとんど受けなかったという。むしろ休業中の改装などで忙しかったとか。そんな山倉さんだが、三児のパパでもある。訴えたいことは野球部にいる高校生の長男のことだという。

「息子は一生懸命野球に打ち込んで来ました。もちろんプロになれるとか、そんなレベルでないことは私にもわかってます。でも3年生でようやく掴んだレギュラー、その年に大会がないなんてかわいそうで」

 5月20日、全国高校野球選手権大会を主催する朝日新聞社と日本高校野球連盟は新型コロナウイルスの感染拡大を理由に夏の全国選手権大会と代表49校を決める地方大会すべてを中止した。甲子園の中止は米騒動の時と太平洋戦争の影響による中断以来である。コロナ禍の重大性をまざまざと見せつけられた思いだが、今となっては ―― という人もいるだろう。

「そもそもあの段階で店はどこも開いてたし、人出も戻ってた。判断早すぎたんじゃないですかね、プロ野球と同じように無観客でできなかったんですかね」

 準備や予選を考えると時間的猶予はなかっただろう。甲子園球場はもちろん、各球場をすべてあの段階で使えたかどうかもわからない。コロナ騒動の収束は思ったよりも早かったが、あの時点ではアメリカの状況から第二波も心配されていた。

「そんなことはわかってます。でもね、レギュラーを掴んだ息子の最後の試合が台無しになったんです。バカな親だと他人様は笑うでしょうが、親ってそういうもんですよ」

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン