ライフ

【著者に訊け】伊藤元輝氏 性別適合手術のアテンド業に迫る

伊藤元輝氏が『性転師 「性転換ビジネス」に従事する日本人たち』を語る

【著者に訊け】伊藤元輝氏/『性転師 「性転換ビジネス」に従事する日本人たち』/柏書房 1600円+税

 かつては性転換手術とも呼ばれた〈性別適合手術〉に関し、海外の病院や旅行会社と連携し、渡航から帰国までを手伝うアテンド業者に『性転師』と名付けたこと。そしてこの怪しげな造語を、「お、いいですね。詐欺師みたいで」と言って表題に使わせてくれた業界第一人者・坂田洋介氏と出会えたことは、著者・伊藤元輝氏や私たち読者にとってもまさに幸運だった。

 共同通信社神戸支局での取材時、著者はスキンヘッドに口髭のいかにも〈商売人〉ふうなアクアビューティ社代表の坂田氏と出会い、タイを拠点に性別適合手術の斡旋を手がける彼の仕事に興味を持ったという。

 しかしそれはあくまでも〈面白い、ネタになる〉という興味であり、非当事者として〈キワモノ〉的に関心を寄せただけかもしれないと、伊藤氏の筆は正直だ。その率直さが取材対象や読者からの信頼を育み、私たちは当事者の切実さと、それを間近に知る業者側の葛藤、そして業者の存在をどこか訝しむばかりだった世間や自分との温度差に、改めてハッとするのである。

「新聞記事用の取材では性同一性障害で手術をした当事者に焦点を絞り、坂田さんには手術の前後に密着させてくれる方を紹介してもらっていました。今回書籍化するにあたり、ようやく業界の方に力点を置けました。

 やはり新聞で扱うには、性転師はまだニッチでいかにも怪しい仕事ですよね。ただその怪しさが、僕自身も取材すればするほど晴れる感じがあった。この感覚は、取材経緯をそのまま順を追って書いてこそ、伝わるんじゃないかと思ったのです。本書をイロモノ本として手に取る人も多いと思う。それが読むうちに共感に変わるなど、変化を追体験できる本になっていれば嬉しいです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン