「アテンド業という仕事に光を当てたつもりが、当事者心理のかなり深いところまで話が聞けました。
2004年に戸籍上の性別変更を認める特例法ができた後も、適合手術を受けることをその条件とする人権的是非や、実態に即さない制度のせいで手術の保険適用率が低いことなど、問題は山積しています。でもそのことを新聞で記事にしても読み飛ばされやすい。僕自身は非当事者ですが、自分は〈外側〉の人間だと意識したところで、結局は〈そもそも「外」も「内」もない〉ことに思い至った。たぶんそれが、本書を通じて一番共有したかった感覚だという気がします」
ある人は使命、ある人は客としての割高感からその仕事に就き、驚くほど自由で多様な起業の光景。そうか、人はどこからでも始められるんだと、コロナ後の働き方に関してヒントや勇気すらくれる、意外(?)な良著である。
【プロフィール】いとう・げんき/1989年福岡生まれ。早稲田大学法学部卒業後、「総合商社だけ受けて、全部落ちて」三次募集のあった大手証券に入社。「株価8000円とかの頃です」。だが、厳しい営業職に音を上げて2か月で退社。マレーシアの回転寿司チェーンSushi Kingの幹部候補に応募するも「22歳はさすがに若すぎるらしくて」。そんな中「通信社は意外と条件がユルイことに、親が気づいたんです(笑い)」。共同通信社大阪社会部を経て現在神戸支局勤務。175cm、79kg、A型。
構成■橋本紀子 撮影■国府田利光
※週刊ポスト2020年7月10・17日号