人の往来が増え「夜の街」のひとつであるススキノの飲食店ではクラスターが発生(時事通信フォト)
自粛期間中のパチンコ店がそれ以外の外食や小売と違うのは、店を開けていればそれなりに稼げたことだろう。客が来なければ休業するしかないし、実際それで臨時休業を決め込んだ飲食もあったが、パチンコ店は開けていれば儲かった、それでもパチンコ業界は国や自治体の命令に従って自主休業したことになる。それなのに、まるでコロナの元凶のように日本中から叩かれてしまった。
「普段のおこないが悪いから、イメージが悪いからとか散々でしたね。いまその役目は夜の街ですかね。ホストクラブもあれだけクラスターが出れば対策は必要でしょうね。でもパチンコ店からクラスターは発生していない」
そう、クラスターは発生しなかった。いまに至るまで、日本中から袋叩きに遭って当然といった行為をパチンコ産業はしていない。そもそも劇場であれ、居酒屋であれ、夜の街であれ、コロナが発生したからと十把一絡に叩いていいわけでもあるまい。
「あそこがそうだからどうとか言いたくありませんけど、百貨店とか発生しても叩かれない。世間のお気持ち次第ですね」
苦笑する西口さんだが、かなり腹に据えかねていることが私にはわかる。西口さん、いや西口はあのころもそうだったがすぐに言葉を荒らげる。普段は物静かで冷静なだけに瞭然だ。ブレスレット状にコマを余らせた雲上時計をじゃらりと回す。
「でもね、それは個人的に構わないと思ってます。私たちは来てくれるお客さんだけを相手にしていればいいんですから。以前ほどの客入りじゃありませんが解除後の売り上げはまずまず、すぐ店がどうなるものでもない。むしろ新台のほうが頭痛い」
私たちはもう日常を取り戻した
西口さんによればコロナの影響も一段落して、ようやく予定していた新しいパチンコ、パチスロ台が揃い始めたという。私はパチンコを打たないのでよくわからないが、「遊タイム」なる新機能が搭載されているパチンコ台が期待されているそうだ。現状は機種もわずか、『PモモキュンソードMC』など西口さん個人としては好きだが正直なところ「ノーコメント」とのこと。
「これから導入するエウレカとかアクエリオンの新台も遊タイムを搭載してますよ、その辺のアニパチ(アニメ原作のパチンコ台)だと日野さんもわかるのでは」
パチンコ・パチスロとアニメ産業はもはや切っても切り離せない関係だ。あとで調べると8月予定の『P交響詩篇エウレカセブン HIーEVOLUTION ZERO』と『Pフィーバーアクエリオン ALL STARS LIGHTver.』のことらしい。なるほどエウレカやアクエリオンなら私もよくわかる。モモキュンもかろうじて分かる。西口さんもアニメやゲームの洗礼を受けた団塊ジュニアのオタクなのでアニパチやアニスロは大好きだが、実際の営業となると西口さんの期待は9月に予定されている海物語(『Pスーパー海物語 IN JAPAN 2 金富士』)の新台だそうだ。こちらには遊タイムは搭載されていないが田舎のファンは台に保守的、とくに高齢のファンは「とりあえず海物語」らしい。コロナの影響で遅れに遅れていたが、なるべく早く導入したいという。ちなみに導入台の時期に関してはホールにより異なる上にコロナの影響がいまだに強い。あくまで予定であり、取材時点の話かつ個人の感想とさせていただくことをご容赦願いたい。