【著者に訊け】小泉武夫氏/『食いしん坊発明家』/新潮社/1400円+税
コロナ禍もあって菌活や免疫力アップに効く食材が俄かに注目を集める昨今。それ以上に心と体を内側から元気にしてくれるのが、「発酵仮面」こと小泉武夫氏の自伝的青春小説『食いしん坊発明家』である。
主人公は福島中通り地方に代々続く酒蔵に生まれ、母を早くに亡くしたものの、自称美食家の父親や料理上手な番頭〈富治さん〉らに囲まれ、自由奔放に育った〈俺〉。彼が野山に鳥を追い、山菜を採るなどして多様な才能を開花させてゆく様は、ほぼ実体験のままだとか。
「合言葉は、食って閃け!です(笑い)」
そんな小泉氏にかかれば食い意地もモッタイナイ精神も、全ては発明の母として、全肯定されてしまうのだった。
「そりゃそうです。人間、食べられなくなったらお終いですし、大事なのはそのエネルギーで何を生み出すかでしょう? 例えば私は長年発酵学や食文化の研究に携わる一方で、発明も大好き。既に日本発明協会から2回、表彰もされていますが、そのうちの1つは匂いの強さを数値化するという東工大との共同発明でした。
とにかく子供の頃から食うことが、好奇心の源だった。それこそ昼飯を食いながら『夕飯は何を食おう』とか、常に頭は次に食べる物のことを考えていました。〈出汁入り味噌〉や〈液体納豆〉など、本書に登場する発明も全部、私が実際に考案したものです」