国内

陽子線の術後照射の利点、隣の臓器の副作用恐れずにがん死滅

メディポリス国際陽子線治療センター(撮影/関谷知幸)

 日本では年間9万人を超える人が「乳がん」と診断され、およそ1万4000人が亡くなっている(国立がん研究センター2017年統計)。そんな中で注目されているのが、陽子線治療だ。

『メディポリス国際陽子線治療センター』のセンター長・荻野尚医師が解説する。

「陽子線治療は切らない治療で、痛みがなく、副作用も非常に少ない。さらに再発がほとんどないといわれています。従来の放射線治療はX線を使います。X線は体の中を通り抜ける性質があり、がん細胞を攻撃すると同時に、正常な組織にもダメージを与えるため、副作用や新たながんを誘発するリスクがあります。一方、陽子線は水素の原子核を光の速さほどにまで加速させて照射する治療法。病巣をピンポイントで攻撃でき、がん周辺の正常な組織への影響が最小限に抑えられます」

 標高330mから望む錦江湾と対岸の大隅半島、眼下には指宿の街並みが広がる。薩摩富士の愛称で親しまれる開聞岳の美しい稜線が近くに見え、ぐるり360度、心が和む穏やかな眺望が広がる。ここは世界で唯一の「リゾート滞在型陽子線がん治療施設」。

 指宿市の高台にある東京ドーム77個分の広大な敷地内は、四季折々の花が咲き、トレッキングや展望台から遠くの島を眺めて大自然を満喫。治療施設に隣接する「指宿ベイヒルズHOTEL&SPA」の天然温泉、砂風呂や岩盤浴等で心と体をいやし、本格フレンチや鉄板焼きレストランでいただく自家農園の新鮮野菜やきのこで、免疫力アップも期待できる。4年前に乳がんと診断された長野県在住の原田真弓さん(60才・仮名)が治療を受けたのもまさにこの施設。彼女は負担が少ないこの治療法を受けた日々について「バカンスのように過ごせました」と述べる。

「1日の治療は約30分。それ以外は敷地内を散歩したり、ランニングしたり、市内に買い物に出かけたり。遊びに来てくれた友人と鹿児島市内を観光したりもしました。桜島も行ったし、開聞岳にも登って、しまいにはヨガ教室に通い出しちゃって(笑い)。まるでバカンスでしょ? 切る手術だったらこうはいかなかったですよ」

 陽子線治療の対象となるのは前立腺、肺、すい臓、肝臓、腎臓、頭頸部など。治療できないがんもある。

「がんが転移して複数あったり、白血病のような血液のがんは治療できません。また、胃がん、大腸がんもできません。常に不規則に動いているため、陽子線の照射が難しいことと、薄い胃壁や腸壁が照射に耐えられない可能性があるからです」(荻野さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン