つまり、トーナメントの頂点を目指すことと、体調を考慮しながら継投策を講じ、ベンチ入りメンバー総出で試合を戦うことは、大船渡のような学校の場合、二律背反することでもある。
「なんとかそれを両立させながら……矛盾しているようなことを追い求めていこうと思っていますが、やっぱり難しいですね」
8月10日から開催される「2020年甲子園高校野球交流試合」は、選抜に出場予定だった32校の救済措置として聖地に招待し、それぞれ1試合だけ戦う“夏のセンバツ”だ。甲子園が通常開催に戻った時、昨年にも増して継投策は目立つようになり、投手の登板過多を防ぐために大事な試合でエース(怪物)を起用しない――そうしたシーンも出てくるかもしれない。その度に國保監督の采配が思い起こされ、高校野球は佐々木朗希以前と、佐々木朗希以後で語られていくことになるだろう。
プロ1年目で、いまだ試合登板がない佐々木が今後、どのような野球人生を歩むにしても、あの日の國保の起用が正しかったか間違っていたか、答えは出ない。
確かなのは、公立校の青年監督である國保監督が新たな時代の扉を開いたということだけだ。