国内

オンライン授業を続ける大学は学費を減免すべきと考える理由

キャンパスでの交流が学生にもたらすものは大きい(イメージカット)

 コロナ禍はすべての人々のライフスタイルに大きな影響を与えているが、なかでも見過ごされている感が否めないのが大学生をめぐる処遇である。コラムニストのオバタカズユキ氏が指摘する。

 * * *
 コンテンツ配信サイトのnoteに、7月26日、「大学生A」さんが、「大学生は世間から舐められている」という題名で投稿した文章がある。まず、そこからの引用を読んでいただきたい。

〈大学生だけが自粛から抜け出せないままでいる。小中高も再開、旅行もオッケーなのに大学に行くのはダメ。後期オンライン授業が次々決定し、大学生は孤独に一年間パソコンとともに過ごすことを強いられている〉

〈オンライン授業があるならいいじゃないかという現状を全く理解していない方からのお声も頂く。オンライン授業はあくまでも一時的なものであるし、動画を見て感想文をひたすら書いたり、説明もろくにせずに課題だけを大量に出して、提出物などが返却されないために自分がどう評価されているかも分からないこの状態が一年? みなさんが思っている以上にオンライン授業の質はよくないですよ(すべてではないと思いますが)〉

 コロナ禍において、日本の大学生はどんな状況におかれているのか。この原稿を書くにあたり、ネット上に存在する彼らの声を片端から読んでみたのだが、上記の「大学生A」さんの嘆きは、その代表例だと感じた。今の日本の大学生の多くは、オンライン授業に縛られ、提出物に追われ、孤独な毎日に相当参っている。

学問を与えてくれるのは誰か

 特に、大学1年生が気の毒だ。入学後、一度も大学キャンパスに行ったことがないという学生が大半で、オンライン授業しか受けていないから、当然のことながら大学の友達が一人もできていない。

〈いったい自分はなんのために大学生になったのだろう……〉

 そんなふうにうな垂れる1年生がそこらじゅうにいる。せっかく合格って、入学した大学なのに、そこで大学生になったという実感が未だにない。そりゃそうである。大学での学びというものは、授業だけで得るものでは決してない。同級生や先輩など、同じ学生同士の人間関係を通じて学んでいくものだからだ。

 私は、大学でもいわゆる「人生勉強」が大事だと言いたいわけじゃない。そうではなくて、大学で扱う「学問」は大学の先生方が教えてくれる以上に他の学生が、結果的に与えてくれるものであることを確認しておきたいのである。

 具体的にいえば、単純な話。大学キャンパスで人間関係ができれば、ほぼ自動的に知の競争が始まる。なんということのない世間話であったとしても、その話しぶりで相手がどれだけ知的な人間なのか、測り合い、競い合うのが大学キャンパスという場所なのである。

 学友Aが自分の知らない言葉を使った。その言葉を知らない自分を隠しつつ、負けちゃいられないぞとAの話に食らいつく。学友Bが教科書ではない本を読んでいた。知らない著者だし、ちょっと難しそうな本だ。これはヤバいぞ、追いついてやるぞ、と自分もこっそりその本の読破を試みる。

 あるいは、理屈っぽい学友Cがいる。そのCと、性格的には正反対そうな軽いノリの学友Dが話しこんでいる。「なんの話?」と声をかけてみたら、「ちょっとね」とDにかわされ、二人の話はヒートアップする。だんだん抽象的な内容になっていく。その時、自分は「これが、議論ってものか……」と知る。

 そんなこんな青臭い知的交流ができるのが、大学という空間なのだ。そこには知のライバルの友達がいて、その友達に負けたくないから、いや、同等レベルの仲間になりたいから、学生たちは学ぼうとする。先生に言われなくても、読書や議論を自分から始めて、知識を増やし、思考の幅を広げ、それまで知らなかった世界を獲得する。

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン