それが7月28日に開かれた鹿児島県知事の定例記者会見だ。もともと鹿児島県は、県知事会見を主催する鹿児島県政記者クラブ(青潮会)の規約により、知事会見にクラブ非加盟の記者は参加できなかった。フリーランス記者の有村眞由美氏の働きかけで数年前からクラブ非加盟記者の「出席」は認められるようになったが、「挙手・質問」は一切認められなかった。

 だが7月12日に投開票された鹿児島県知事選で当選した塩田康一氏や鹿児島県サイドは、選挙期間中から、選挙後に開かれる知事就任会見でフリーランス記者の質問を容認する姿勢を打ち出していた。

「この時点で、『規約ではオブザーバー参加しか認められていない』として、フリーランス記者が会見で知事に質問することを認めなかったのは青潮会だけでした。権力者に突っ込んだ質問をして有益な情報を引き出すのは記者の使命ですが、鹿児島では、そもそも任意団体に過ぎない記者クラブが、他の記者の質問する権利を奪っていたのです」(畠山氏)

 しかし、畠山氏や有村氏がSNSで逐次状況を伝えたことなどにより、知事選後に青潮会はクラブ総会を開き、フリーランス記者の質問を認める規約改正を行った。塩田康一知事の就任会見では事前申し込みをしなかったフリーランス記者と青潮会の間にひと悶着はあったものの、鹿児島に足を運んだ畠山氏は会見に出席して質問することができた。長い時間をかけて、ようやく扉が開いたのだ。

 メディアが、国民の知る権利に応えようとしないリーダーと対峙し、責任ある言葉を引き出すために、多様な観点を持ちつつ物怖じしないフリーランスの存在は、有害ではなく役に立つはずだ。会見の場をオープンにして、記者クラブとフリーランスが切磋琢磨しながら、権力の監視という記者本来の役割を果たすことを、多くの国民が期待している。

●取材・文/池田道大(フリーライター)

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