東京都交通局は、2012年から早起きキャンペーンを実施してオフピーク通勤にも取り組んでいる。さらに、2017年には小池百合子都知事が提唱した時差Bizを積極的に呼びかけた。
そうした混雑対策を講じてはいるものの、日暮里・舎人ライナーの利用者はそれを上回るペースで増えつづける。こうしたラッシュ緩和策を講じても、焼け石に水。朝ラッシュ時間帯の混雑は、いっこうに改善しない。
現在、日暮里・舎人ライナーは5両編成で運行されている。抜本的に混雑を緩和するためには、6両編成や7両編成といった長大編成化も一案としてある。しかし、列車を長大編成化すれば、その分だけホームを長くしなければならない。
深刻化する日暮里・舎人ライナーの混雑は、実のところ朝のラッシュ時間帯にほぼ限定されている。それ以外の時間帯では、他路線と比べても利用者は多いとは言えない。そのため、長大編成化は過剰な投資になりかねない。
日暮里・舎人ライナーは歳月を経るごとに順調に利用者数を増やし、増収もしている。それでも、いまだに採算は取れていない。累積赤字は言うまでもなく、2019年度だけでも約5億6000万円の赤字を計上している。
そうした収支面も、東京都交通局が二の足を踏む理由になっている。赤字路線であるがゆえに、車両の長大編成化や駅ホームの延伸工事といった莫大な費用を捻出することに理解が得られにくい。しかも、日暮里・舎人ライナーは足立区と荒川区の2区しか走っていないので、一部地域の問題と片付けられてしまう。
また、当事者間でもスタンスに隔たりがある。足立区は混雑対策に懸命だが、一方の当事者である荒川区は「日暮里・舎人ライナーが、朝ラッシュ時に混雑することは承知しています。しかし、区民から日常的に改善を求める声は出ていません。そのため、行政としても早急に改善するべき課題とは認識していません」(荒川区防災都市まちづくり部都市計画課)と冷ややかなスタンスを取る。
荒川区が日暮里・舎人ライナーの混雑を深刻な問題と受け止めていない理由は、足立区とは異なりほかの公共交通機関で代替できることが挙げられる。