リーダー怖い。逆らうと仕事がなくなる
グエン君がさっきから言っているのはこういうことだ。グエン君は専門学校に通う留学生だが、「1週間28時間以内」という資格外活動の許可を貰いコンビニで働いている(夏休みなどの長期の休みは「1日8時間以内かつ週40時間以内」働ける)。ベトナムに比べたら賃金はいいしコンビニのバイトは極端な重労働というわけではない。日本は豊かで生活も便利、都心は楽しいことばかり、それなのに同僚の日本人アルバイトはみんな暗くて、自信なさげに見えるというわけだ。
「一生懸命働くの当たり前、なのに私とみんな(グエン君の言うみんなは外国人のこと)ばかり仕事させる。命令かなしい」
つまり日本人アルバイトが面倒な仕事を押し付けるということかと聞くと、「そうです」とうなずく。かわいそうに、どこの仕事先にも困ったヤツはいるが、グエン君は日本人のそれに当たってしまった。ちなみに細かいニュアンスなどは英語で補足してもらっている。
「仕事だからがんばります。でも命令怖い。みんな怖がってる」
みんなというのはグエン君と同じ留学生アルバイトのことだ。中国人やバングラデシュ、ネパールやインドネシアなど様々な国のアルバイトの子たちが働いている。その日本人もアルバイトのはずだが、ひょっとしてそいつはいわゆるバイトリーダーなのか。
「シフトリーダーです。怖いです、逆らうと仕事少ないです」
なるほどコンビニの場合はシフトリーダーか。で、そのバイト頭が外国人バイトを牛耳っている、というわけか。そして気に入らないとシフトを減らされる。日本人同士でもよくある話だがひどい話だ。グエン君、日本語はまだまだだが、実は英語ができてフランス語と中国語(普通語)も簡単な会話ならできる。日本人ならとんでもないエリートだ。なので実際の会話はグエン君に英語である程度補完してもらっている。それで私も推測しているというわけだ。
「リーダーに逆らって、社長さんに言われたらクビになります」
社長というのはコンビニ店のオーナーのことで、その日本人のシフトリーダーをかわいがっているようだ。確かに、私が別の取材で知り合ったコンビニ店のオーナーは外国人のほうが真面目でよく働くし文句も言わず最低賃金で働いてくれる上に語学が出来るので日本人なんかいらないと言っていたが、あれは都心でも繁華街のど真ん中で少々特殊、やはり日本人が来てくれたほうがいいオーナーが多いだろう。