◆メリットではなく愛情でつながる人を見つけたい
現在、由佳さんは娘を連れて都内の実家で生活している。コロナが落ち着いたら離婚したいといわれており、裕樹さんは、親権についての話し合いを進めなければと考えている。
「働いているといっても、いまの彼女の稼ぎでは、俺のサポートがないと絶対やっていけないんですよ。娘には苦労させたくないから、俺が親権をとりたいと思っています。もちろん完ぺき主義の彼女は自分で育てると主張していて、ただ、生活レベルが下がることはわかっているし、彼女の親も高齢なので、自分たちはシェアハウスに入ると言ってますね。子育ては社会でやるものだという自論を持つに至ったようで、その辺ももう、相容れないかなと思っています……」
コロナがなければ、多忙な中年夫婦は危機に気付かずに、あるいは、危機に片目を瞑って、老後まで駆け抜けたのかもしれない。そういう意味では、早めに互いの価値観の不一致に直面したことを、裕樹さんは前向きに受け止めている。とはいえ、不惑を前にやりがいのある仕事を手にし、自分のもとを去っていった妻には複雑な思いがある。
「彼女にとって俺は、仕事を手にするまでの保険だったのかなあって。賢い人ですからね。結局、俺たち夫婦って、メリットでつながっていたんだと思います。だからメリットがなくなったら、あっけなく壊れてしまった。もし再婚することがあれば、次は、ちゃんと愛情でつながれる人を見つけたいですね」
※名前はすべて仮名です