──Uber Eatsや楽天デリバリーなど、宅配の競合他社との差別化ポイントは?
中村:競合が増えてデリバリー市場が拡大するのはいいことだと思います。ただ、当社は「お客様の選択肢の広さ」が他とは違います。お店のラインアップや品揃えが豊富なところから比較して購入したい、というのがお客様心理です。
当社のもう1つのアピールポイントが「安心」「安全」です。配達代行はお店に代わって食品をお届けするわけですから、その飲食店のスタッフになり切って、サービスクオリティーをきちんと担保することが非常に重要です。
そのため配達スタッフの採用時も必ず研修を実施し、採用基準に満たない方はお断わりしている。採用コストはかかりますが、結局はそのほうが継続的に誠実に働いていただける方を採用できる確率が高いのです。
コンタクトレンズも届ける
──今年、LINEと資本提携されました。そのLINEは来年3月をメドに、ヤフーを傘下に持つZホールディングスと経営統合する。その効果は?
中村:出前館がさらに飛躍するためには、資本提携するパートナーが必要だとここ2年ほどずっと考えてきました。そんな中、ご縁あってLINEさんと組ませていただくことになった。追い風のいま、資本提携によって事業資金が潤沢に入ってくるのはとても幸運なことだと思います。
LINEのIDは、日本人が一番多く持っているIDの1つですから、それがあればすぐに注文できる新システムは利便性が高いと思います。
LINEさんにも「LINEデリマ」というデリバリーサービスがありますが、年内には出前館に一本化する予定です。
さらにその先、ヤフーさんとLINEさんが一緒に作っていかれる予定のスーパーアプリ(*)も楽しみです。フードデリバリーでは、国内ではどこも追いつけないサービス体制の構築を目指していきます。
(*ひとつのアプリで検索、ニュース、配車、Eコマースなど様々な機能が利用できるシステムのこと)
──食べ物以外のデリバリー需要も増えていくのでは?
中村:今後、ますます広がっていくでしょう。すでに首都圏の一部では、出前館を通じてメガネスーパーさんの使い捨てコンタクトをデリバリーしています。近い将来、アパレル関連や酒販系の企業ともコラボレーションできるようになると思います。
ただし、まずはフードデリバリーで完全なネットワークを構築することが大事です。出前館の拠点から半径3キロ以内を網の目のようにカバーし、地方にも広げていく。夢は広がるばかりです。
【PROFILE】なかむら・りえ/1964年、富山県生まれ。関西大学卒業後、1988年リクルート入社。株式会社ハークスレイを経て、2001年7月から夢の街創造委員会(2019年に出前館に社名変更)取締役、2002年に同社代表取締役社長。2010年カルチュア・コンビニエンス・クラブ取締役。2012年に出前館社長に復帰し、現在は会長。
●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト):1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2020年10月2日号