前年の開示社数281社、571人に比べると、わずかながら減っているが、これには理由がある。
「2020年3月期は対中貿易の落ち込みやコロナ禍の影響(1─3月期)で業績悪化につながった企業もあるため、前年に比べ減ったものと思われます。コロナ禍の影響が直撃している現状から、2021年3月期はさらに減りそうですね。すでに役員報酬減額を表明している企業が次々と出てきています」(東京商工リサーチ情報本部の坂田芳博氏)
1億円以上の役員報酬を得た企業トップや役員530人は、まさに新自由主義経済の「勝ち組」といえよう。役員報酬はあくまで企業が業績に応じて支払う報酬なのだから、外野がどうのこうの言う話ではないかもしれないが、社員や一般サラリーマンからすれば腑に落ちないケースもある。決算が巨額の赤字となり、株主配当がゼロになってしまった企業でさえ、多額の役員報酬が支払われているのだ。
最も分かりやすい例が日産自動車である。2020年3月期は最終損益6712億円もの巨額赤字となり、期末配当が無配となった。内田誠社長は6月の株主総会で役員報酬のカットや辞退を明らかにした。
しかし、有価証券報告書をみると2019年9月に辞任に追い込まれた西川廣人前社長・CEOに対し、2億9800万円の報酬と退職慰労金1億1400万円、あわせて4億1200万円が支払われている。ゴーン体制を支え、その暴走・不正を許してきた当事者でもある元トップに巨額の報酬が支払われたのだ。日産の社員や株主からすればとても納得できる話ではないだろう。