国内

「点検強盗団」の被害現場 高齢者が住む家を手当り次第に

ガス点検を装った男が押し入った住宅は防犯設備が古いことが共通していた(時事通信フォト)

ガス点検を装った男が押し入った住宅(時事通信フォト)

 14世紀に京都・鴨川の二条河原に掲示された「二条河原の落書」は、当時の権力者や不安定な社会への皮肉を込めた匿名の文書として歴史の教科書にも登場するが、そこに「此比都ニハヤル物」として「夜討強盗」が真っ先に挙げられている。奇しくも、都市部ではいま「点検強盗」が激増して世の中を震わせている。被害者はいずれも高齢者で、他に共通点が見当たらないが、防ぐ手立てはあるのか。ライターの森鷹久氏が、点検強盗の被害に遭った場所や人を訪ね、防犯について考えた。

 * * *
 首都圏や関西で相次ぐ「点検強盗」。

 いわゆる「オレオレ詐欺」など、被害者から金品を掠め取る特殊詐欺から、事前にターゲットの資産状況や在宅時間などを確認した上で、被害者に危害を加えて金品を強奪する「アポ電強盗」へ移り変わったのが一昨年ごろ。そして新たに登場したのが、電気やガス業者を装い自宅に押し入る「点検強盗」である。

 点検強盗のひとつひとつを確認すると、相手が弱者であれば誰彼構わず襲いかかるもので、資産を持っていようがいまいが関係なく狙われていることが分かる。そこから考えられる犯人像は、同じ高齢者リストらしきものを使用している特殊詐欺はもちろん、アポ電強盗の犯行グループとも大きく異なるとしか思えず、雑で暴力的、かと思えば幼稚で、計画性も感じられない。かつて詐欺事件の犯人が強盗に転じるなどありえなかったが、アポ電強盗、点検強盗と事態がすすむにつれ、行動がより雑に、思考はより凶暴になり、殺人さえも厭わない野獣へと成り代わってしまった、とも言える。

 粗雑で粗暴な犯罪集団に対して、自衛には何が必要なのか。そこで筆者は改めて、被害者がどのような人たちなのかを探り、連中が狙う「ターゲット」の実像を追いかけることで防犯の道を探ってみた。

アポ電の類いはなかった

 東京都A区の公営アパートに住む酒井敏夫さん(70代・仮名)は、9月23日午後3時ごろ「ガスの検針に来た」という2人組の男を部屋に招き入れた。男らは配電盤などをチェックする素ぶりを見せた後、酒井さんの口や手足を粘着テープで縛り上げ、室内を物色。殴る叩くなどの暴行はなかったが、部屋にあったおよそ30万円の現金が盗られた。同じアパートの住人女性(70代)がいう。

「今流行りのアポ電強盗かと思いましたが、酒井さんのお宅には電話がない、携帯も持っていないんです。インターホン付きカメラ? あるのは呼び鈴だけ。このアパートに住んでいるのは、そんなに裕福ではない中高年ばかり。独居老人も多い。高齢者を狙った詐欺事件が相次いでいることは知っていましたが、ここの住人には縁がないと思っていた」(住人女性)

関連キーワード

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト