なお、これらのテレビ視聴率や視聴者数のデータは、ほぼニールセン・リサーチが独占しているが、同社の調査の特徴は、政治リサーチのサンプルを22歳から54歳に絞っていることである。アクティブな人を調べなければ意味がないという理由からだが、日本の調査とは大きく違うことにも注意が必要だ。
CNNの急回復は、出演者を大幅に入れ替えた効果だ。レギュラー陣からゲストまで、インテリジェントなタレントを揃えてFOXに対抗している。FOXは徹底した“右利き”ばかりである。前出のショーン・ハニティ氏をはじめ、タッカー・カールソン氏、女性キャスターのローラ・イングラム氏など、いずれも話はうまく視聴者を惹きつける魅力はあるのだが、とにかくリベラルなものには非難や攻撃を徹底し、右寄りのものは褒めちぎるという露骨さから、あまりインテリジェンスを感じる人たちではない。時に不快感も覚える。CNNは、あえて逆の路線を選択してここまでは成功している。
NSNBCは、「Morning Joe」という朝6時から9時までぶっ続けでやるニュースショーが大成功して息を吹き返した。キャスターのジョー・スカーボロー氏は元下院議員で、トランプ氏とは徹底して反対の立場。相手役の女性がミカ・ブレジンスキー氏で、カーター政権の国家安全保障補佐官を務めたズビグニュー・ブレジンスキー氏の娘である。筆者にとってブレジンスキー氏は外交や政治を学んだ師なのだが、いつもクールで厳しい同氏が、娘の話になると昔から相好を崩していたのが思い出される。そのミカ氏も反トランプの重要なキャストの一人となっている。
候補者同士の舌戦に負けず劣らず、3大ケーブルニュースの戦いも天王山を迎えている。最後の局面になると政策やスキャンダルなどは影を潜め、視聴者にわかりやすいワンフレーズが連呼される傾向があるのも選挙キャンペーンに似ている。CNNとMSNBCはひたすら「トランプ政権の失政で22万人がコロナで死んだ」と言い続け、対するFOXは「バイデン氏はワシントンに47年間いても実績がない。オバマ政権の8年間も何もしていない」と繰り返す。どちらの声が有権者を動かすのか。いよいよ1週間後に結論が出る。