幹部たちが相次いで「謎の人事異動」
9月に入って、およそ半年ぶりに全学教授会が開かれたというが、学内で生じた混乱、コロナ対応の不備についての説明はなかったという。防衛大の教官のひとりはこう話す。
「説明がないばかりか、8月の人事異動では、コロナ対応を誤ったことの責任を問われる立場にあるはずの人たちが、次々と他の部署に転出しました。原田幹事は東北方面総監、城戸謙憲総務部長は防衛監察本部の副監察監となった。学生を軟禁状態に陥らせた責任を問われないように、外に逃したのではないかといわれている。結局、問題を隠蔽したいという印象ばかりです」
そうしたなか10月になって、防衛大に対する防衛監察が始まった。聞き取り調査の対象の一人となったのが等松教授だった。
「自身に対する不可解な聞き取り調査や一向に責任を取らない執行部の姿勢に対して義憤を感じた等松教授は、防衛監察の聞き取り調査の場で今回の申立書を提出したそうです。ただ、監察団から“受け取る立場にない”という対応があったことから、岸大臣らに送付するというかたちになったようだ」(同前)
等松教授は、本誌の取材に対し「大臣と監察本部に申立書を出したのは事実だが、回答と善処の決断を待っている状況なので、詳細は差し控えたい」と述べるにとどめた。
一方、今回の申立書について防衛省の見解を問うと、
「防衛省宛てにどのような書類等が送付されているかについては、相手側との関係等があることから、お答えを差し控えます」(防衛省報道室)
とするのみ。監察の際のやり取りについても回答せず、責任ある立場の人物が8月に異動になったことは「人事については適材適所で行っている」(同前)と説明した。
一般論としての回答に終始したが、10月にあった訓練視察後の國分学校長らによる宴席については、
「窓開けによる換気、手指消毒の徹底、大声を出す行動を控えるなどの感染予防措置に努めていたとの報告は受けておりますが、防衛大臣通達において、隊員一人一人が、各自の行動を厳しく律する必要がある局面に来ているとされている中において、学校長らが、平日の昼間に、一般の飲食店において部外者と飲酒を伴う昼食を実施したことは、管下の教職員・学生の士気に悪影響を及ぼしかねない軽率な行為であったと考えています」(同前)
と釈明した。長期にわたる軟禁状態を強いられた学生たちの気持ちを考えれば、当然のことだろう。
コロナ対応の時期にその任にあった河野太郎・前防衛相は菅内閣では規制改革担当相に転じて「はんこ廃止」などでメディアの注目を集めているが、後任の岸防衛相は防衛大教授からの決意の告発文をどう受け止めるのか。対応が注視される。