威勢良いエンジン音が驚くほど静かに
オンロード志向を高めた恩恵を得られるもうひとつのシーンは山間部のワインディングロードである。自重1.9トン台という重量級ボディのため敏捷性はないが、カーブでの回頭性は上がった。
デリカD:5は前後駆動力配分を自動的に調節する電子制御4WDシステムを備える。ダイヤルで2輪駆動にも切り替えられるが、山岳路でのハンドリングは後輪にもある程度トルクがかかる4WDのほうが断然良かった。ステアリングの修正が少なくなる分、乗り心地も4WDのほうが上だ。
もう一点、旧型から大きく向上したのはエンジンと変速機だ。変速機はステップ数自体が6速から8速へと物理的に進化したので、発進加速、高速クルーズ時のエンジン回転数抑制の両面で当然のようにプラスに作用していた。
だが、それ以上に進化幅が大きかったのはエンジン。三菱自動車のディーゼルは伝統的にトラックフィールで、アイドリング時から“カラッカラッテカラッ”と結構なノイズと振動を発し、低速からの加速時には“ガララララ”とこれまた威勢良い騒音を立てていた。
そのエンジンを大幅に改設計したと新型発表時に聞いていたので、いかほどのものかと興味津々だったのだが、これが驚くほど静かになった。
アイドリング時のノイズは柔らかく、加速時も“ゴロロロロロ”という抑制的な音質に。ノイズレベルも大幅に低減されていた。性能やノイズ低減のレベルアップが著しい今日のディーゼルエンジンの中では決してトップランナーというわけではないが、それでもこれなら十分に乗用車だと言える水準に達していた。
エンジンと変速機の改良は燃費向上にも少なからず寄与していた。港区の三菱自動車本社でクルマを受け取ってから東京東部の筆者の自宅までは平均車速が15km/hという、いわゆるベタ混みの渋滞路だったのだが、コールドスタートでの20km弱のドライブで平均燃費計値は10.5km/L(リットル)と、10kmを割らずに済んだ。これは改良前に比べて2割ほど良い。
ちなみに比較的流れの良い都市走行では同じくコールドスタートで13km/L前後をマーク。こちらも1.9トン台の重量級モデルとしては十分に受け入れられる数値であろう。
長距離では2回、区間燃費を測った。東京東部から盛岡まで常時2輪駆動で走った573.7km区間は、給油量35.8リットルで実測燃費は16.0km/L。そこから三陸経由で東京に帰着するまで常時4輪駆動で走った758.5km区間は、給油量46.3リットルで平均燃費16.4km/Lだった。
流れの良い都市部で13km/Lで走れたのに対して郊外であまり伸びない印象があるが、これは前面投影面積が大きく、空力特性もそれほど良くない大柄なボディによるところが大きいように思われた。瞬間燃費計の値を観察するに、スピードを抑え気味に走ればもっと燃費を伸ばすことも可能だろう。