大規模改良を受けたことで、ウィークポイントもあるものの今日でも新車で買う価値のある3ナンバーミニバンのボーダーラインはクリアしているという感のあったデリカD:5。プラットフォームはダイムラー(当時はダイムラークライスラー)との共同開発によるもので、2003年に海外向けギャランで使われたのが初出という非常に古いものだ。そのポテンシャルが低かったら今頃はとうに命脈が尽きていたところで、ベースの設計が良かったのは幸いと言うべきであろう。これはRVRなど、他の三菱車にも言えることだ。
もちろん、この構成のままいつまでも戦い続けることはできない。なるべく早い段階で軽量化を受け入れられる新造プラットフォームを投入したいところであろうが、仮に次期アウトランダーで新プラットフォームを投入したとしても、それを使って他のモデルを作っていくにはそれなりの開発費が必要だろう。新興国中心に戦略を切り替えた三菱自動車にとって、先進国向けモデル、ましてやデリカD:5のようなほぼ日本専用のモデルを作ることは大変なことだ。
先進国向けの新モデルを開発するだけの余裕ができるまで復活できるか、それとも挽回かなわず新興国専門メーカーになってしまうのか。今から3年間は三菱自動車の命脈を決めるきわめて重要な期間となるが、その時間稼ぎをするためにはデリカD:5のようなモデルを“古いけれども良い”と思ってもらえるようなユーザーコミュニケーションが必要だ。
果たして三菱自動車がユーザーの“三菱愛”の琴線に触れ、それをやりおおせることができるのか。とてつもなく困難なことではあるが、クルマの出来を見るかぎり、一分の可能性は残されているように思えた。