国内

菅義偉氏の出世は「竹中平蔵氏のおかげ」 今も続く師弟関係

菅義偉首相と竹中平蔵氏の間柄とは(時事通信フォト)

菅義偉氏と竹中平蔵氏の間柄とは(写真は2006年、時事通信フォト)

 菅政権の「新自由主義政策」のブレーンとされるのが、人材派遣大手パソナグループ会長の竹中平蔵氏である。だが、菅氏と竹中氏の関係は、通常の政治家とブレーンの関係とは趣が異なる。竹中氏が総務大臣時代、菅氏は副大臣として仕える身。つまり、主従関係が逆だったのだ。ノンフィクション作家の森功氏がレポートする。(文中敬称略)

 * * *
 庶民派の実務型政治家か、それとも格差社会を広げる新自由主義者か。

 首相の菅義偉について、好意的な者は前者のように持ちあげ、反感を抱く者は後者だと批判する。もっとも私は、どちらでもない気がしている。

「菅さんはブレーンが提案する政策にパクッと食らいつき、それをそのまま実行しているだけです。だから細かい話が多く、大枠として何がやりたいのか、ビジョンが明らかでない。政策に対するこだわりや深い考えを感じたこともありません」

 ある高級官僚はそう評した。たとえば庶民派に見えるのは携帯料金の引き下げなどが生活に直結し、利用者の損得感情を擽る政策だからだろう。半面、携帯事業に参入した楽天の三木谷浩史の訴えに乗っかっているのは、誰もが想像するところだ。

 本人は自民党総裁選のときから、目指す社会像を「自助、共助、公助」と言ってはばからない。とりわけ自助は、競争原理を唱える新自由主義に映る。政界で競争に勝ち残ってきた自負からそう発想しているとも指摘されるが、その実、当人には市場競争経済にこだわりがあるわけではないだろう。経済政策の理念を授けているのが竹中平蔵である。

「竹中さんとは、いつもここでお会いしているのですよ。今も変わらず、頻繁にお目にかかって相談しています」

 2015年6月、私が永田町のザ・キャピトルホテル東急のレストラン「ORIGAMI」の個室で初めて取材したとき官房長官の菅はそう笑った。奇しくもホテルで私の前に会談していたのが竹中だった。菅の新自由主義者の顔は、鏡に映った竹中のそれだといえる。

 菅は2005年11月、小泉純一郎政権で総務省の副大臣に抜擢された。このとき郵政民営化を担って総務大臣に就いたのが竹中である。ここで二人が上司と部下の関係になり、いわば師弟関係は今も続いている。

 竹中は菅との出会いについてノンフィクション作家の塩田潮のインタビューにこう答えている。

「小泉内閣時代、たたかれていた私を応援してくださる5~6人の政治家の会があり、菅さんはそこにいた。副大臣の座は、総務相の私の指名ではなく、首相官邸から『菅さんでどうですか』と聞かれて、『大歓迎です』と申し上げた」(サンデー毎日2020年10月4日号)

「竹中さんのおかげで大臣に」

 だが、菅が総務副大臣に起用されたのは、そんな綺麗な話ではない。もっと泥臭い裏話がある。元総務省自治税務局長の平嶋彰英は次のように打ち明けてくれた。

「実は郵政民営化をめぐっては、総務省内に反発がありました。なかでも郵政行政局長と審議官が裏で民営化を止めようとしているのではないか、という噂まであり、2人が飛ばされる大事件があったんです」

 郵政民営化をめぐっては自民党内でも意見が二分された。総務大臣の麻生太郎は反対派の一人と目された。平嶋がこう続ける。

「小泉さんにしたら、麻生さんがそのまま総務大臣をやっていたのでは郵政官僚の巻き返しに負けちゃうかもしれないと心配したのでしょうね。(民営化に乗り気でない)麻生総務大臣を替えるよう、竹中さんが小泉さんに囁いたとされています。それで小泉さんは麻生さんを総務大臣から外務大臣にし、代わりに竹中さんを総務大臣につけた。僕らから見たら、麻生さんの人事も飛ばされたような感覚でした」

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン