今でもYouTubeで斎藤を見ている
高校時代から評論家に指摘されていたのは、投球の際に踏み出した左足が棒のように突っ張ることだ。
「伸びた膝がストッパーになって、体重が打者方向に乗らないから、上体投げになってしまう。股関節が柔らかければ……。本人はここが痛い、あそこが痛いとは言わない子なんです」
母校・崇徳高校の監督となっても應武は、二軍にいる斎藤のピッチングをYouTubeなどでチェックしている。
「大きくフォームを変えたところはありませんが、試行錯誤のあとが見えるし、悩んでいるのがよくわかる。それでも試合後のインタビューなどを読むと、『良い所が見つかった』と。相変わらず弱音を吐かない男だなと思いますよ」
在籍10年が経ち、ベテランの域に入っていく斎藤は、3年間勝利がなくとも、右ヒジに爆弾を抱えていても、現役を続けられる。甲子園のヒーローにして、ドラ1である右腕へのこうした厚遇がかえって、他の選手や日ハムファンの反感を買い、斎藤をより難しい立場に追いやっている気もする。
他球団なら既に戦力外になっていてもおかしくないし、支配下から外して育成契約にし、回復状況を見極めるモラトリアムが設けられてもおかしくない。
「斎藤に(育成選手に与えられる)100番台の背番号が似合いますか? それでユニフォームが売れますか? “あの身体でよくやっているな”が私の率直な感想です。“よくやった”とはまだ言いたくない」
正念場を迎えている教え子に、強面の應武らしいエールを贈った。(文中敬称略)
●取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)