しかも、NHKは総理会見を総合テレビで生中継するが、前半の新聞・テレビの記者との質疑応答だけで、途中から画面がスタジオでの解説に切り替わるケースがほとんどだ。フリー記者の質問を報じないのである。
「どんな質問が出るかわからないから、官邸に配慮して全国放送しないように感じる」(畠山氏)という声があるが、NHKは、「各地域のニュースが始まる時間帯も踏まえながら総合的に判断しています。中継でお伝えしきれなかった部分については、インターネットで全てお伝えしています」(広報局)と説明した。
今回、フリー記者で質問したのは政治ジャーナリスト・安積明子氏だ。コロナで女性の自殺者数が増えていることを指摘し、菅首相に今後も会見を国会の節目でしか開かないのかを質した。安積氏の質問もNHK中継で放送されなかった。
「指名されないだろうと思っていたので、びっくりしました。会見後にクラブの記者さんから、『事前通告あったんですか』と尋ねられました。というのも、私が質問した女性の自殺については総理の答弁ファイルに入っていなかったようで、秘書官がざわめいたそうです。菅さんはメモがないからアドリブで答えたようですが、女性の自殺数についての言及はなく、質問と回答がかみ合っていませんでした」(安積氏)
国民には見えない会見の舞台裏だ。
※週刊ポスト2020年12月25日号