「検査で保健所を訪れた際、聞き取り調査がありました。発症前2週間で誰と会って何をしたか、訪問先の部屋の広さや滞在時間まで細かく聞かれたのち、検査で陽性反応が出て、自宅療養となりました。
そこで悩んだのが、仕事関係の誰にどこまで伝えるか。会社は休む必要があったので上司に伝えましたが、困ったのが取引先。発症前に短時間会っただけなので感染させたとは思えなかったけれど、陽性だと伝えたらパニックになって、『あんなやつとはやってられない』と今後の仕事に影響が出るかもしれません。かなり悩んだ末、ぼくからは伝えないことにしました」
新中野耳鼻咽喉科クリニック院長の陣内賢さんは「倫理的にあってはならないことだが、保健所に“虚偽の答弁”をしても、忘れていた可能性を含め、罰せられることは恐らくない」と指摘する。
「ただ、勤務先には隠してもいずれ明らかになりますし、その際には人事評価が下がります。会社のためを考えれば当然、職場には正直に伝えるべきです。保健所の聞き取り調査の際、濃厚接触者の定義は感染者と『1m以内かつ15分以上の接触』とあり、濃厚接触者と判断された人には、保健所から直接連絡が入ります。取引先などに感染を伝えるかどうかの判断は、保健所に任せておけば大丈夫です。
ただし、濃厚接触者となる可能性の高い相手に対しては、事前に勤務先や上司を通じて、『濃厚接触者と判断されたら、保健所から連絡がいく可能性があります』と伝えておくと、心象が多少はよくなるでしょう」
感染がわかった場合、勤務先には原則として報告すべきだが、「例外」もある。危機管理コンサルタントの田中優介さんが指摘する。
「発症の前後2週間ずっとリモートワークをしていて、ほかの社員との接触がなく、その先もリモートが続くケースでは、必ずしも会社に伝える必要はありません。その場合、後に発覚して追及されたときのために『感染拡大という視点で連絡の必要がないと考えました』などと“言わなかった理由”を明確にしておくことが大切です」
※女性セブン2021年1月7・14日号