◆夫の気持ちが離れた「一言」
出産後一年して仕事に復帰。順調そうな家庭生活に、なぜ亀裂が入ったのか。翔子さんはこう分析する。
「息子が生まれた後、私の結婚生活からは、夫が抜け落ちてしまったんです。夫は子育てに協力的だったんですが、それでも私は忙しくて、子育てと大学で精一杯。自分の時間も絶対ほしいですしね。夫は、仕事の話を聞いてもらったり、二人でデートしたいタイプだったのですが、そういう夫婦の時間を、私は無視したり、拒否していました。もともと恋愛感情があった人ではなかったから……」
それでも翔子さんは、結婚生活に大きな不満はなかったのだという。一方、幸也さんは不満を募らせていったようだ。結婚3年目の春、離婚してほしいと切り出される。「好きな人ができた」と。すでに付き合っているとも告げられた。
「私は離婚したくないと言いました。浮気は許すから、子供ために、絶対に離婚はしないと。妥協してまで手に入れた家族なのに、っていう思いがあったかな」
が、怒鳴りあいの中で、夫が放った一言に、翔子さんの決意は翻ることになる。
「『結婚してあげた』って言われるのに、もう耐えられないって。それを聞いて、私、無意識のうちに、『結婚してあげた』って言っていたことに気付いたんです。『妥協してあげた』『結婚してあげた』って……、たぶん、すごく言っていた。ただ、本当に悪気はなくて、そうやって相手の上に立つことで、自分の選択を正当化していたというか、自分の気持ちをおさめていただけだったんですけど……結局、妥協した側より、妥協された側が、いやになっちゃった、という末路ですね」
かくして二人は離婚。元夫は離婚後も子育てには協力的で、いまは息子の親として、良い関係を築けているという。翔子さんは自身の結婚をこう振り返る。
「どちらかが妥協して結婚しても、二人にメリットがあればうまくいくのかもしれません。結婚は生活なので、経済的なものも大きいですからね。でもやっぱり、人の気持ちって一筋縄ではいかない。恋愛感情がなくても、相手に対して対等な感情や、対等な人間関係を築けないと、仲のいい状態を続けるのは難しいのかなと思いますね」
ここで冒頭の話に戻る。よって翔子さんは、バチェロレッテ・萌子さんの選択を支持するのか?
「萌子さんには理想を追求してもらいたい一方で、私自身は、理想の相手を探し続けていつまでも結婚できないよりは、息子を授かることができたし、学ぶことも多かったので、結婚してよかったと思っています。ただ再婚するなら、今度は、好きな人としたいですね」
※名前はすべて仮名です