溝口:そもそも祭りを仕切るのはテキ屋、つまりヤクザです。初詣をはじめ、お祭りというのはほとんどが神社の境内で行なわれるものだけど、境内の敷地の地割りは伝統的にテキ屋が担ってきた。
鈴木:「あなたはここに店を出していいよ」、とショバ割りをする権利ですね。場所によって売り上げが全然違いますから。
溝口:一番利益率がいいのが“粉もの”。小麦粉を使った焼きそばやお好み焼きの類いです。
鈴木:あと、綿菓子はめちゃくちゃ売れるうえに材料は砂糖代だけだから、“親分ネタ”、つまり組長しかやれないと言われていました。本当に組長が作るわけじゃないけれど。
溝口:テキ屋は博徒と並ぶ伝統的なヤクザなんだけど、今は暴排条例で神社の境内からテキ屋が外されつつあるし、コロナでそもそも初詣に出店が出ることもないでしょう。
鈴木:最近は写真を撮りに行くと、暴力団系列のテキ屋は顔を隠しますからね。警察にバレるから撮らないでくれと。
【プロフィール】
溝口敦(みぞぐち・あつし)/ノンフィクション作家。1942年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業。『食肉の帝王』で2004年に講談社ノンフィクション賞を受賞。主な著書に『暴力団』『山口組三国志 織田絆誠という男』など。
鈴木智彦(すずき・ともひこ)/フリーライター。1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。
※週刊ポスト2021年1月1・8日号