そして、その支援は新型コロナ感染者の治療に対してだけではなく、もっと俯瞰的に医療現場の困難を見なければならないということを、次のような「声」でまた知る。
〈感染病棟と、一般病棟がある。一般病棟で、コロナ感染患者が発生すると病棟閉鎖するため、その皺寄せを他病棟が補っている。慣れない他科の入院、オペ出しオペ後など、普段の業務にさらに負担になっている現状。コロナ感染病棟に関しては、対応について議論されているが、本当の医療崩壊は一般病棟から始まっている。コロナ感染病棟は、何かと手当てなどあるが、それ以外を支えている看護師は疲弊し、残業、残業で疲れ切っている。何の手当てもなくただ使命感で頑張っているスタッフをどう支えていけばいいのかと思う。経営陣は、コロナしか見ていない現状があるため、一般病棟の看護師達の離職は進んでいる〉
コロナ感染患者を救えても、そのせいで他の病人の命を救えなかったら意味がない。コロナ対応、特に重症者を扱う集中治療室では大量の医療スタッフが必要になる。そのぶん一般病棟の医療スタッフを削るしかないのが現状のようだが、そのやり方だけというのもまた崩壊への道である。
しかし、こうしてほんの少しの医療現場の「声」を聞いただけでも、ヤバイなと感じると同時に、今まで国は何をやっていたんだ、という思いになる。我々が新型コロナの感染第一波を経験してから、もうずいぶん長い時が過ぎている。途中、感染が落ち着いていた期間もあった。その間に今の看護師不足を始めとする医療崩壊の諸問題は、容易に予想できていたはずだ。そして、対策を講じていて当然であったはずだ。
それが、今になって「学徒動員」である。ロクな対策を打ってこなかったことの証左なのである。この怠慢に対して、国民は怒っていいと思う。必要以上の危機を煽ることは避けたいが、仕事をしないお上に対してはもっと批判の声をあげていい。いや、声をあげる責任が我々にはあるとするべきだ。