●型を使った演出
元子は派手なドレスに着物姿。まさしく水商売のプロフェッショナルの「型」をしっかりと踏襲しています。一方、『半沢直樹』の中で目立つ「型」といえば歌舞伎。いずれも、独特な世界のルールに沿ったお定まりの「型」をきっちりと見せてくれていて、遊び心いっぱいの演出が楽しい。ディフォルメされた異世界を見ると視聴者はワクワクするのです。
●主題歌・音楽のパターン化
あの曲を聴けばすぐドラマの映像が浮かぶ、という音楽の使い方も共通しています。『黒革の手帖』は作曲家ユニット・ワンミュージックによる金管楽器を主体とした高音のメロディ。「勢い」「決意」「挑戦」といった雰囲気を一気に醸し出していきます。
『半沢直樹』は作曲者・服部隆之氏による「テーマオブ半沢直樹」。畳みかけるようなあの音を耳にすると、たちまちバンカーの世界が見えてきます。いずれもしても敵に挑む高揚感と緊張感を醸し出すテーマ音楽です。
−−「元子って“悪女”なのに、演じていてこんなにも気持ちがいいものだったんだ、とあらためて感じることができました」と武井さん自身も語っているように、武井版『黒革の手帖』は「いよっ! アッパレ」と観客席からかけ声をかけたくなる爽快感に満ちています。
とは言っても、単純な勧善懲悪ストーリーにとどまらず、一人一人の人物にそれなりの言い分がありそれぞれの理屈や正義があって欲望がある。極悪人もいなければ極端な善人もいない。というあたり飽きのこない人間ドラマになっています。
もし、元子が「女版 半沢直樹」に相当するとすれば……すぐにとは言いません、しっかりと元子がパワーを溜めこんだ時期に満を持して、次なる連ドラ化を期待したいと思います。