映画史・時代劇研究家の春日太一氏による、週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、舘ひろしが語った、ホームドラマやコメディにも挑戦した理由、公開中の映画『ヤクザと家族 The Family』でヤクザの親分を演じるにあたって浮かんだ渡さんの姿についての言葉を紹介する。
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舘ひろしは従来のハードボイルドイメージの作品だけでなく、ホームドラマやコメディなどにも挑戦し続けている。二〇〇七年のテレビドラマ『パパとムスメの7日間』(TBS)では、新垣結衣の演じる高校生の娘と人格が入れ替わる父親役で、外見は舘ひろし、内面は女子高生というコミカルな設定に挑んだ。
「いま僕が七十歳を過ぎて俳優としてやれているのは、あの作品をやる勇気があったからだと思うんです。
これまで僕を見てきた人たち、ハードボイルドのイメージを持っている人たちはあの作品を観ない。でも、女子高生は観る。それは僕にとって新しい、そして素晴らしいマーケットでした。そう考えると、あの作品に出るべきだという答えになってくるわけです。でも、やはり勇気のいる決断でした。
僕にオファーをくださる人たちは僕を見て、やれると思ってオファーをくださる。ということは、あとは僕にやる勇気があるかどうかなんですよね。
この間の映画『終わった人』もそうです。そのタイトルだけで二の足を踏むじゃないですか。それでもオファーしてくるということは、これをやらせたら面白いと思うからそう言ってくださるわけで。ある程度の勝負ができる感覚があれば、よほど酷い台本でない限り、やります」
一月公開の最新映画『ヤクザと家族』では、現代において段々と生きる場所を失っていくヤクザの親分・柴咲を演じている。
「この作品のオファーをいただいた時、今の時代にヤクザ映画ということで、うちの会社はあまりやらせたくなかった。でも僕はホンをいただいて読んだ時、凄くやりたいと思ったんです。
基本的に、ヤクザという疑似家族を通して本当の家族を描いた作品だと思った。だから、僕は非常にリスキーだけれどもやる価値があると感じ、やると決めました。やくざが非常に生きづらい社会情勢の中で、病気になっていく柴咲の姿がその象徴として上手く表現できればいいなと。時代の流れの中で、こうやってやくざは死んでいく。その象徴だと捉えました」