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パニック障害の症状は突然襲ってくる

愛娘のサポートに救われて……

 ここまで回復できたのは、そんな母親をそばで見守り、支え続けてきた、せいなさんの存在も大きいという。

「せいなは嫌な顔もせず、愚痴を聞いてくれるんです」と言う母の感謝の言葉に、現在高校3年生になったせいなさんはこう返す。

「母の病気は、私が物心つく頃から見ていますが、そのなかで、否定することがいちばんダメだと思うようになったんです。ですから、基本的には“つらかったね、嫌だったね”と、聞くようにします」

 せいなさんの協力で断酒にも成功したという。

「パニック障害に飲酒はよくないとわかってはいたんですが、毎日ビール6缶くらい飲んでいたので、体にも影響が出ていました。がまんしていたけれど、どうしても飲みたくなったとき、せいなに“やっぱり飲んでええやんな”と聞いたら、低い声で、“いいの? どうぞ。知らんで。私は別にいいんやけど”と言われて……。そのときは、頭にきて“わかったよ、飲まへんよ!”ってキレ気味に言い返しちゃったんですが、それがきっかけで断酒できましたね」(ほりさん)

「大丈夫」という口癖は大丈夫じゃない!

 薬をのみ、仕事を調整し、酒を断つ。これで症状がだいぶ緩和したが、さらに効果的なのは、“お守りを持ち歩く”ことだったとほりさんは言う。

「気分がすっきりするミントのタブレットと水を持ち歩いています。交感神経が活発になっているとき、水を飲むと鎮静化できると聞いたので。あと、タオルハンカチ、リュックなど、手触りや抱き心地のいいものを持つようにしています」(ほりさん)

 発汗や震え、死ぬかもしれないという恐怖感などの症状は電車内などでよく起きたが、そういうとき、これらのお守りが役に立ったという。

「お守りも試行錯誤の末にたどり着いたもので、お守りにならなかったものもあります。それは“大丈夫”という言葉。口癖にしていたときがあるのですが、これは逆効果で、もっと焦ってしまいました。人に言われるのはいいんですけど、自分で言い聞かせると力んじゃう。どうしてもしんどいときは、すべてをあきらめて寝ることにしています(笑い)。調子のいいときに頑張ればいいかなって思えるようになりました。あと、つらいときはがまんしないで人に頼る。これも病気になって学んだことですね」(ほりさん)

 パニック障害の人は、人に頼ってもいいんだと語るほりさんだが、せいなさんのことを話すときは、「本当にありがたい」と同時に「申し訳ない」という言葉が頻繁に出てくる。しかし、せいなさんはこう返す。

「母が病気なのは、私にとって当たり前のこと。症状が出たら対応するのが普通になっているので、気を使ったりはしていません。母が発作で動けなくても大丈夫なように育ててもらったことで、心に余裕を持って動けるようになったと思います。焦ったり慌てたりすることは誰にでもあるし、慣れればいいかなって。病気と意識しすぎないで接した方がいいと思っています」

 普段は普通に接し、頼られたときには手を貸す。パニック障害で苦しむ人にとって、そういった対応がいちばん助かるのだと、ほりさんは言う。

「以前は“早く治して、前みたいにやりたいことをやりたい”と思っていましたが、病気がきっかけで、心理学やカウンセリングについての勉強を始め、資格も取りました。パニック障害になって不自由になったこともあるけれど、気持ちが穏やかになり、人生観が変わりました。悪いことばかりじゃないと思っています」(ほりさん)

【プロフィール】
ほりみきさん/漫画家・イラストレーター。1972年生まれ、滋賀県出身。2005年からフリーのイラストレーターとして活躍。主な著書に『もう大丈夫 パニック障害でもがんばれる!』(講談社)。 

※女性セブン2021年2月11日号

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