「実際に目の前で俳優さんが芝居をしているのを見ていて、一生懸命に観察しました。

 当時はいろんな役者さんが江戸からいらしていて──京都では東京から来た俳優さんを『江戸の役者』っていうんです。そういう江戸の役者さんを見て、『芝居ってこうやってやるんだ』と勉強しましたね。

 たとえば緒形拳さんと林隆三さん。昼休みにお二人でキャッチボールをして遊んでいるんです。緒形さんが『隆三、ここで俺がこういう芝居をするから、お前、この辺で受けてくれるか』と言うと林さんが『じゃ、俺はこんな感じでやります』って、打ち合わせしていました。それで監督が来たら芝居を見せる。

 半年や一年レギュラーをやっていると、俳優って役のキャラクターになり切るんですよね。なり切った人間が動くと、その人の生き様を背負った芝居になります。そんな二人がセリフをやりとりすれば、時には監督の指導より的確になるわけです。

 僕も後に『トミーとマツ』をやった時がそうでした。松崎しげるさんと僕の二人の息が合ったら、僕たちのやることが全て正解になっちゃう。

 そうやって俳優の面白さを知るうちに、大学を卒業する頃には俳優の道に進もうと。大部屋の先輩に相談したら『それは江戸に行かなあかん。俺らみたいに関西弁しゃべっていたら役できへん。まず江戸弁しゃべれんとな』と。そういうアドバイスもあって、東京に出ることにしました。親には反対されましたが、二、三年東京で──という形で納得してもらいました」

【プロフィール】
春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中。

撮影/五十嵐美弥

※週刊ポスト2021年2月26日・3月5日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン