特殊詐欺などの防止を呼びかける警視庁の広告(時事通信フォト)

特殊詐欺などの防止を呼びかける警視庁の広告(時事通信フォト)

「俺たちが騙すのは金持ち。10万円しか持ってない人たちから5万円盗るのは気が引けるが、1億持っている人から5万円盗るのはどうってことない、5000万円盗っても相手には5000万円残るのだと。さらに1億持っているということは、相当に溜め込む欲深い人であるから、貧乏な俺たちが盗ることは、あまり悪いことではない、そんな教えですね」

 末永氏はすでに詐欺から足を洗い、飲食店事業を営んでいるというが、かつての仲間たちが今なお「仕事に励んでいる」といい、末永さんに「探り」とも言える話を持ちかけてくるという。

「要は、私が『持っている』のかどうかという判断をしたいんでしょう。例えば休業や営業時間短縮に関する補償金について、様々な手を使って『100万円以上もらえる』と持ちかけられました。彼らが持ち込んだのは、全国で相次いだ持続化給付金詐欺と同じようなもので、運営実態のない法人をどこからか探し出してきては、法人登記簿を書き換え、私の店で営業そしていたように見せかけ、その分の補償金を受け取れる、というもの。私が欲深く、ズルをしてでも金が欲しいと考えていたらまんまとハマっていたでしょう」

 末永氏でさえ「持つ者」になってしまえば「持たざる者仲間」から狙われるのだ。そして詐欺師が狙う欲が金だけではないことが、コロナ禍で浮き彫りになりつつある。

「インチキな健康食品、それこそ『不老不死の薬』みたいなのが売れる理由わかりますか? 人より長く健康で生きたいからで、それも欲。ワクチンの接種がいよいよ始まるが、医療関係者や高齢者よりも早く打ちたい、早く安全が欲しい、そんな人たちが絶対にいるとわかっているから、今のトレンドはワクチン詐欺。メールや電話、葉書を使って、かつての仲間たちが金持っていそうな層に近づこうとしているようです」

 待てば打てるが、人より先に打って安心したい、そのためには無料で打てるはずのワクチンにも大金を支払う、そういった「欲」を持つ人々は詐欺師が格好の的になる。欲がある人々を騙すことは、心が痛まないどころか「してやったりだ」と、悪を成敗したような気にさえなる詐欺師もいるという。

「給付金にワクチンときて、仮にもう一度定額給付金がもらえるとしたら、給付金が増額でもらえるなどといった美味しい話をでっち上げ、相手から金を奪い取るようなことを、詐欺師は考えるでしょう」

 また末永氏は、世界的に株価は上がり続けているのに、一般市民の実感が伴っておらず、持つ人と持たざる人の乖離が進めば進むほど「金持ちからは奪って良い」という考えを抱く人間も自ずと増えるはず、と指摘する。

 先に出た「ワクチン詐欺」は、全国で似たような話が報告されており、筆者の調べによれば、地方都市に形成された「マルチ商法」ネットワークを使って、話が流布されているともいう。具体的に言えば、料金を支払えばワクチンを人より先に打てて、打ちたい人を紹介すれば、今度は自分にも幾らかキャッシュバックされる、といったもの。欲だけでなく、人が「狡さ」や「卑怯さ」を見せた時、その様子を舌なめずりをしながら眺めている、それが詐欺師なのである。

 コロナ禍によって様々な「欲」や「卑怯」が渦巻く今、誠実な生き方を選ばなければ、危機に晒されるのは自分自身であるという事実を、肝に銘じておきたい。

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン