国内

地震速報でテレビ各局を悩ませる「フェイク動画」の氾濫

相馬市では被災者たちががれきの山に苦しんだ(時事)

相馬市では被災者たちががれきの山に苦しんだ(時事)

 東日本大震災から10年の節目を前に、2月13日には福島県と宮城県で最大震度6強の大きな余震が発生し、国民は改めて地震の恐ろしさと備えの必要性を思い知らされた。普段あまりテレビをつけないという人も、地震の際には緊急特番に見入るのではないか。東日本大震災の後、各局はアナウンスの内容や見せ方などを工夫し、より多くの人に危険性と正しい行動が伝わるよう放送内容も進化させてきた。

『週刊ポスト』(2月26日発売号)では、テレビはもとより、地震や津波の検知、予測、伝達などの仕組みがどれだけ変わったか詳しく検証している。多くの国民にとって、その成果を知るのはテレビの速報だ。テクノロジーの進化はもちろん減災にも役立っているが、それによる苦労もある。キー局の情報番組ディレクターがこう話す。

「東日本大震災の時もそうでしたが、今はほとんどの人がスマホを持っていて、動画撮影も普段からしているので、現場の映像はリアルタイムで続々と入ってくるようになりました。音声は放送に不向きなケースも多いのですが、映像はテレビに耐えられるものがたくさんあります。各局とも視聴者から動画投稿を受け付けるアドレスを設けていますが、大きな地震があると回線がパンク寸前になります。

 一番の課題は、届いた大量の動画をチェックして放送するものを選ぶ作業をいかに効率よく、すばやく行うかです。それをやる人間がいないと、せっかく送ってもらったものがタイムリーに使えないことになってしまう。視聴者投稿では、必ずしも正しい場所や状況が確認できるわけではない。なかには、過去の動画や外国の映像などフェイク動画を送ってくるイタズラもあります。それを信じて放送してしまうと、災害のさなかに誤った情報を伝えることになる。人命にも関わることですから、それは絶対に避けなければなりません。そこのチェック体制は、まだ手薄と言わざるを得ません」

誰もがスマホを持つことにより現場動画はリアルタイムで多く集まるようになった(イメージ=共同)

誰もがスマホを持つことにより現場動画はリアルタイムで多く集まるようになった(イメージ=共同)

 あってはならないことだが、そういう不埒な輩は必ずいるものだ。ネットでも、フェイク情報やフェイク画像・動画を流して、それを信じるユーザーを見て笑う不謹慎な投稿は多い。メディアにそれを信じ込ませて報道させ、あとから謝罪させることをゲームのように楽しむ不届き者も少なくないのである。人員も豊富で災害時には信頼度が高いとされるNHKでも同じ悩みを抱えているようだ。記者の一人はこう言う。

「今回の震度6強の地震特番では、たまたま福島にいたディレクターが自分のスマホで現場を撮影し、中継でもスタジオからの質問に答えてレポートしていました。今後は、記者やディレクターはもちろん、あらゆる職員が緊急時には必要な映像や情報を提供できるような体制になっていくと思います。Twitterなどに流れる動画を使えばいいという意見もありますが、実は確認作業が大変で、そもそもフェイクの危険性もありますからね」

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン