2016年に日本でも出版されベストセラーになったビジネス書に、『GRIT やり抜く力-人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(ダイヤモンド社)がある。著者は米ペンシルベニア大学の心理学教授、アンジェラ・ダックワース氏。この本では、偉業を達成する人に共通するのは「才能」よりも「やり抜く力」という研究成果がまとめられている。
GRITとは、困難にあってもくじけない気概や気骨という意味。ダッチワースの研究によると、目標を達成するには、才能よりも情熱と粘り強さ、継続することが重要であり、さらに目的を見出し、もう一度立ち上がれる考え方を作り、希望を持つことが大切だという。
池江選手にはまさにGRITがあり、それにより見事目標を達成した。彼女のTwitterにはこうある。「パリを目標と言っていたのに心のどこかには東京五輪に行きたいと言う気持ちも少なからずあって、それを達成できたからこその言葉なのかもしれません」。レース直後、「努力は必ず報われる」と語ったことについての言葉だ。
陸上の元日本代表藤光健司氏は、「勝者=報われるという考えだと大半の人の努力が報われていないことになる」と前置きし、「正しい努力とは一体何なのか」とツイート。それに対し池江選手は、「どんな人も、努力はしてると思います。ただその努力という定義も難しいな、と思います。本気で目指してきたことをたとえ達成できなかったとしても、その努力は必ず誰かが見てて、誰かが勇気をもらえるのではないでしょうか」とリツイートした。
報われない努力は多いが、努力の過程で、見ている誰かが勇気をもらえることは、案外多いのかもしれない。