車内から見える風景も「スポーツカーそのもの」
GRヤリスのボディは標準のヤリスにはない3ドア。1クラス上のCセグメントスポーツで一時流行った、広く低く構えるハッチバッククーペというやつである。全高は1455mmと、日本で販売される背高・幅狭ヤリスのAWD版1515mmはもちろん、先ごろ欧州カーオブザイヤーを獲得した低車高・幅広版の1470mmよりさらに低い。
筆者はホットハッチをスポーツカーと呼ぶのに抵抗を抱くクチだが、車内から見える風景は予想とは裏腹に、スポーツカーそのものという感じだった。
フロントウインドウの傾斜は強く、サイドウインドウも薄い。運転席と助手席にはスポーツシートが備えられているが、その着座位置も非常に低い。そこに身をかがめて乗り込む所作も、いかにもスポーツクーペ的だ。このあたり、GRヤリスはフォルクスワーゲン「ポロGTI」のような標準車と共通のボディに強力なエンジンを乗せたモデルとは成り立ちが異なることを実感させられる部分だ。
横からのシルエットは屋根の後端が大きく下がるクーペルック。その見た目どおり、後席の居住性は期待できない。身長170cmと小柄な筆者が座っても、頭がガッツリルーフにくっつく感じである。ただし、膝元空間にはいくばくかの余裕があり、スバル「BRZ」/トヨタ「86」のような実用に耐えない有名無実の後席というわけではない。小柄なパセンジャーなら問題なく使えるだろう。もちろん快適性については期待できないが…。
モータースポーツ車両のようなキャラクターの中で、普通のドライブをちょっといい気分にさせてくれるツールは、RZパフォーマンスに標準装備のJBLオーディオだった。
JBLは昔と違ってプレミアムオーディオブランドの中ではバジェットな部類に属しているが、GRヤリスのそれはクルマに合わせたサウンドチューニングがなかなかいい感じに決まっている。
音のディテールが問われる静かなクラシックなどにはあまり向かないが、ドライブ気分を盛り上げるパルシブなポップス、スムーズジャズ、ハウスなどはダイナミックに再生される。オーディオパワー自体も結構強力だった。