また、東急電鉄は東急パワーサプライという子会社を立ち上げている。2016年から始まった電力の完全自由化を受け、東急グループは電力小売業にも参入。東急沿線を中心に契約者を増やしている。
こうした東急の動きは、他社にも広がる。小田急電鉄も小田急でんきを発足させて、電力の販売を開始。東急も小田急も、電気だけではなくガスの自由化に伴ってガス供給事業にも参入した。
「弊社で取り組んでいる太陽光パネルを設置しているのは、自社で消費する電力を少しでも自己調達できるようにするという目的からです。現段階で、電力の小売業に参入する予定はありません」(同)
とはいえ、私鉄は百貨店経営や不動産産業といった多角化によって事業規模を拡大してきた。人口減少や新型コロナウイルスによるリモートワークの普及拡大などもあって、鉄道利用者が増加する見込みは立てづらく、それだけに次なる事業を模索しなければならなくなっている。
鉄道史を紐解けば、現在の私鉄の多くは電気事業を手がけ、沿線に電力を販売していた。逆に、電力会社が鉄道事業に参入したケースもある。東京都交通局は都営地下鉄や都電荒川線を運行しているが、その前身は電力事業を営む電気局だった。そうした経緯もあって、現在も東京都交通局は水力発電所を保有している。
歴史的に見ても、鉄道会社と発電事業の親和性は高い。再生可能エネルギーという新時代の発電方法へシフトしているものの、時代を経て私鉄各社は過去に取り組んできた発電事業に回帰している。再生可能エネルギーへの取り組みや菅義偉首相が掲げるカーボンニュートラルはZES化を加速させることだろう。鉄道事業者にとっても、ZESは新たなビジネスチャンスになるのかもしれない。