人流が変わって新たな感染リスクの懸念

 さて、話を戻そう。なぜ、三鷹市が「まん防」の適用対象とならなかったのか。三鷹市の4月12日時点の感染者数の累計は1224人で、適用された武蔵野市や立川市よりも200人以上も多い。最近の新規感染者数を比べても、武蔵野市と三鷹市はほぼ同じような状況が続いている。

 では、人口比の感染状況はどうか。武蔵野市の人口は14万7975人。人口1000人当たりの感染者数は6.69人となる。一方、三鷹市の人口は19万774人。人口1000人当たりの感染者数は6.42人。これまたほぼ同じ水準だ。

 たしかに飲食店の数では人気エリア・吉祥寺がある武蔵野市のほうが三鷹市よりも3倍ほど多いのだが、これまでの感染状況に大きな差がない以上、三鷹市を除外するというのは理解に苦しむところだ。

 しかも、この一帯で見ると、三鷹市に隣接する武蔵野市、府中市、調布市が「まん防」の適用対象となっているのだ。そのため三鷹市民も納得がいかない様子だ。

「隣接市が対象となっているのに三鷹市が対象とならないのはなぜか、など市民の方からの声が何件か届いています」(三鷹市健康福祉部の担当者)

 対象地域を決めたのは東京都だから、市としても対応には苦慮しているのだろう。ホームページ上に「まん延防止等重点措置期間における市民のみなさんへのお願い」というメッセージを載せ、その中でこう記している。

〈4月12日からは東京都が「まん延防止等重点措置」の実施区域となりました。三鷹市は東京都の定める対象地域から外れていますが、都民の方全体を対象とした要請は継続されており、引き続き下記のことにご協力をお願いします〉

 そのうえで、都の要請内容として不要不急の外出・移動の自粛、変異株により感染が拡大している大都市圏との往来の自粛などを列挙している。

「まん防」の適用が始まり、飲食店の感染防止対策を点検する東京都の職員(新宿区/時事通信フォト)

「まん防」の適用が始まり、飲食店の感染防止対策を点検する東京都の職員(新宿区/時事通信フォト)

 ある三鷹市民はこう語った。

「メディアは『南北問題』だとか言って、店の客が減った、“脱北者”が南口に流れたといったことばかり報じていますが、この問題の本質は都の判断基準の不透明さですよ。なぜ、三鷹市が適用外なのか明快な説明はまったくない。線引きはしょうがない、という問題ではないはず。

 そもそも、三鷹にしろ武蔵野にしろ、都心部に通勤している人がかなりいるわけで、そこを抑えないことには感染防止対策にならないはず。今回のような中途半端な措置は、不公平感だけでなく、人の流れが変わることで新たな感染リスクが生じかねない。都知事はきちんと説明してほしいですね」

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