国内

井沢元彦「北京五輪はナチスドイツのベルリン五輪と同じだ」

習近平が手本にするのは1936年のヒトラーか(時事)

習近平が手本にするのは1936年のヒトラーか(時事)

 新疆ウイグルやチベットでの人権侵害、香港の民主派弾圧、台湾への圧力、さらには南シナ海や東シナ海での一方的な領土拡張行動など、中国の無法行為が止まらないことに対し、欧米がようやく制裁に動き始めた。これまで欧米各国は、中国との経済的な結びつきを重視し、人権問題などに目をつぶってきた。しかし、中国の増長が加速し、アメリカでは人権問題を重視するバイデン政権が誕生したことで、中国包囲網は強まっている。

 アメリカ政府は、2022年の北京冬季オリンピックの集団ボイコットも検討し始めた。『週刊ポスト』(4月16日発売号)では、欧米の対中強硬姿勢に対して、日本政府が弱腰の対応しかできていない現状と背景を詳しく報じている。同特集で北京五輪ボイコットを主張した作家の井沢元彦氏に、改めてオリンピックと政治の歴史を聞いた。井沢氏は、このままではヒトラー政権下で開かれたベルリンオリンピックの苦い経験を繰り返すと警告した。

 * * *
 アメリカ国務省が北京五輪のボイコットを示唆したことに中国は猛反発し、「ウイグルなど少数民族への人権侵害は一切ない」と言っていますが、実際に人権侵害や弾圧は行われています。もしこのまま北京五輪が開催されれば、習近平や中国政府は、「世界は我々が正しいと支持した。アメリカの言っていたことは嘘だった」と宣伝するでしょう。少なくとも中国国民はそれを信じてしまいます。

 それを許せば、ヒトラー率いるナチスドイツが1936年のベルリンオリンピックの成功を足掛かりに世界征服に乗り出したように、中国の対外侵略や人権弾圧に拍車がかかる恐れがあります。

 第一次世界大戦で敗れたドイツは植民地のほとんどを失い、多額の賠償金を課せられて経済がボロボロになりました。失業者があふれて国が亡びる危機のなかで、アドルフ・ヒトラーが登場しました。ヒトラーは軍を増強することで雇用問題を解決しました。数十万人を軍で雇い、失業者がいなくなると、国民は「ヒトラー万歳」となった。しかし、その軍人たちに給料を払わなければならないから、ヒトラーは他国を侵略していきました。そのなかでユダヤ人への弾圧も起きた。今の中国と非常に似ています。

 ヒトラーが政権を獲る前の話になりますが、1936年のオリンピックはドイツとスペインで開催地争いをしていました。ドイツは「敗戦からの復興」をアピールして世界の賛同を得ました。ヒトラーは1933年に政権を獲った当初は、オリンピックなんて意味はないと考えていたらしいのですが、やがて考えを変えて、これをナチスの手で成功させて国民支持の原動力にしようとしたのです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
オンラインカジノを利用していたことが判明した山本賢太アナウンサー(ホームページより)
フジテレビ・山本賢太アナのオンラインカジノ問題で懸念される“局内汚染”「中居氏の問題もあるなかで弱り目に祟り目のダメージになる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
都内の人気カフェで目撃された田中将大&里田まい夫妻(時事通信フォト/HPより))
《ファーム暮らしの夫と妻・里田まい》巨人・田中将大が人気カフェデートで見せた束の間の微笑…日米通算200勝を目前に「1軍から声が掛からない事情」
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン